センバツ「飛ばないバット」に賛否両論 監督からは「高校野球のレベルを上げる」の声
健大高崎(群馬)の優勝で幕を閉じた今年の第96回選抜高校野球。群馬勢初のセンバツ優勝とあわせ、話題となったのは本塁打の少なさだ。大会11日間31試合でたったの3本。うち1本はランニング本塁打で、柵越えはわずか2本だった。 【写真】歴代「センバツ応援イメージキャラクター」の初々しい笑顔 「大奥」女優・小芝風花は16歳の時に選出
「背景には飛ばないバットの完全導入があります」 とは高校野球担当記者。 「ピッチャーライナーなどによる負傷事故の防止に加え、打高投低が進むことによる投手の負担増を防ぐため、反発性能を抑えた金属バットの新基準を2022年に高野連が制定。これが2年の猶予期間を経て完全移行したわけです」
「ホームランやなと思った打球ほど失速」
大会前から本塁打減少は予想されていたが、影響は如実。昨年のセンバツの12本から激減し、センバツでは1975年の金属バット導入後、96年大会の5本を下回る過去最少となった。 21世紀枠で出場した田辺(和歌山)の田中格監督は、こんな感想を口にした。 「ホームランやなと思った打球ほど失速する。(飛距離は)10メートルぐらい違うのではないか」 ただ、「野球の華」である本塁打が減ったことへの嘆きばかりではない。 前出の記者いわく、 「従来の金属バットに比べて明らかに飛距離は落ちるとはいえ、芯で捉えれば従来と同じくらい飛ぶ。つまり感覚的には木製バットに近いというのが、選手や監督のほぼ一致した見解」 つまり“やりにくい”といった声ばかりが聞かれるわけではないのである。 この新規導入されたバットが高校野球の新標準になるため、現場は変革を迫られることに。 「従来の金属バットなら、先っぽや根元に当たっても飛んでいくことがあったが、芯で捉えなければ飛ばないとなれば、それに合わせた技術を要するはず」(同)
「高校野球のレベルがますます上がる」
もとより従来のバットに慣れた球児がプロ入り後、木製バットへの対応に苦慮することは知られている。 夏の高校野球で大会個人最多本塁打(6本、17年)の記録を持つ中村奨成も、鳴り物入りのドラフト1位で地元の広島入りしたが、プロ通算7年目で本塁打は2本のみ。 中村の出身校・広陵(広島)の中井哲之監督は、新基準のバットについて、 「慣れに時間がかかるかもしれないが、これが当たり前になれば、今の高校野球のレベルの高さ・練習法・情報量からみて、ますますレベルは上がる。今後はこのバットでしか練習しないから、レベルは上がるしかない」 その先に考えられるのは“超高校級”とされる高校野球出身選手が、プロ入り後に本領を発揮するまでの時間が短縮されること。この点についても中井監督は「あると思う」と明言した。