米軍のシリア空爆は国際法違反なのか?
9月10日にオバマ大統領がイスラム国(IS)の「壊滅」を目標に掲げて新たな「戦争」を開始して以来、米国のメディアは「イスラム国」一色と言えるような戦争報道を行っています。このように連日戦況が伝えられる中で、ロシアが「今回のシリア空爆は国際法違反だ」と批判していますが、米国内ではオバマ大統領の今回の決定を法的な観点から批判する声はあまり出ていません。 【地図】イラクとシリアにまたがる「イスラム国」活動領域 突如イスラム国というテロ組織の「壊滅」を掲げて戦争を始めた米国の行動は、国際法的に考えて正当なものなのでしょうか?
シリア空爆の法的根拠は弱い
オバマ政権は今回、個別的または集団的自衛権の行使を認めた国連憲章51条を根拠にシリア空爆を開始しました。米国はすでに8月8日からイラク領内にいるイスラム国に対する空爆をはじめておりましたが、イラク政府は米国に対して再三空爆を要請しておりましたし、米国とイラクは安全保障協定も締結していますので、イラクにおける軍事行動は国際法的に特に問題はないと考えられています。 しかしシリアのアサド政権は米国に対して支援など要請しておりませんので、本来ならば国連安保理の決議がなければ、シリア領内で米国が軍事作戦を行う法的根拠はありません。ところがイスラム国はイラクとシリアの国境をまたがるように広範な地域を支配下に収めて新たな国家の樹立を宣言しています。イスラム国の本部や主要な軍事拠点もシリア領内にあり、そこを拠点に彼らは部隊を動かしてイラク領内での攻撃をしているのです。 同じような例はアフガニスタン戦争でもみられました。タリバンはアフガニスタンで米軍やアフガン政府に対するテロを実行し、国境を越えてパキスタン側に逃げ隠れるという行動をとっていました。タリバンやアルカイダの幹部もパキスタン側に拠点を構えていました。米軍はアフガニスタンでは軍事作戦を出来るのですが、パキスタン側では法的根拠がなくて軍事行動をとれないため、パキスタン領内では米中央情報局(CIA)が無人機を使ったミサイル攻撃を行っておりました。これは軍が行う軍事作戦ではなく諜報機関による「秘密工作」という形をとっていたのです。