市販車に近いパーティーレースとS耐マシンの「ロードスター」を徹底比較! なぜ富士スピードウェイで10秒も違うのか?
・そのほかの速さの秘密
ただ、先ほど紹介したリミッターとタイヤだけで、10秒という差がつくとは考えにくい。速さを得るためにはほかにも手が加えられているはずだ。ということで細部をより見ていくと、まだまだ違いがあることに気づく。 まず、見てわかりやすいのがエアロパーツだ。S耐では運営に認められた市販部品のみ装着が可能となっている。レーシングカーの証でもあるGTウイングは、ほとんどの車両(ハッチバック系を除く)に取り付けられているが、フロントリップやバンパーは同じ車種でもチームによって異なる。65号車はオーデュラ製のフロントリップなどを装着するが、ほかのロードスターは純正アクセサリーのみにとどめている車両もある。なお、市販エアロパーツひとつあたりの上限金額(販売価格45万円以下)が決められているのもS耐ならではの面白いレギュレーションだ。 エンジンもファインチューニングされているが、大幅な変更はない。エンジンのバランス取りを行い純正書き換えでECUを変更程度となる。吸排気系は大きな変更はできない。65号車は純正形状のエアクリーナーボックスにラムエアインテークを装着。排気系はエキゾーストマニホールドから後ろの変更が認められている。これで純正の約130馬力から160馬力前後にまで引き上げられているとのこと。 足まわりの変更点は、ショックアブソーバーとブッシュ関係がメイン。ただ、ブッシュに関しては全体ではなく部分的に強化品に変えるチームもあるとのこと。このあたりはセットアップやチームの考え方で異なるだろう。また、LSDも機械式に変更とされている。 ボディはスポット増しが施されていて、車内を見るとロールバーが組まれ、レースに不要な助手席など、余計なものが撤廃されている。なお、パワーウインドウは備わっていて、ユニットや操作系も純正のまま残されている。 シートは基本的に市販のフルバケットシートへと変更。ここまでだとかなり軽そうに見えるが、同クラス内で性能均衡を保つため、ロードスターは1015㎏とS耐では最低重量が定められている。ロードスターカップの最低重量は1010㎏(パーティーレースは1085㎏)なので、数字を見るとノーマルから物凄く軽くなっている訳ではない。なお、ST-5クラスで戦うMAZDA2やフィット、ヤリスなどのFFハッチバック勢は1トンを切る数値が最低重量となっている。 この最低重量による性能調整がS耐を面白くしている要素のひとつといえよう。ちなみに、GR86などに代表される、2.4リッターまでの車両がエントリーできるST-4に参戦する2リッターのロードスターRFは、最低重量が960㎏となっている。なんとST-5のロードスターより軽いのだ。なお、GR86の最低重量は1185㎏となっている。つまり、ライバルより排気量が小さいぶん、より軽い重量が認められているということになる。