吉田正尚 メン・オブ・ザ・イヤー・ベスト・ベースボール・プレイヤー賞──フルスイングの侍は、メジャーでも“頂”を目指す
WBCでは獅子奮迅の活躍
メジャーデビュー寸前のWBC、メキシコとの準決勝で吉田は同点3ランを含む獅子奮迅の活躍を見せた。 「ホームランの打席はよく覚えています。2アウトでしたし、繋ぐことを意識していました。追い込まれた形になったけれど、冷静でしたね。打ったのはチェンジアップ。ベストスイングで打ったボールがポールを直撃してくれました」 ボストンのファンも吉田への期待で胸を膨らませたことだろう。絶好のタイミングでの渡米、まさにスティーブ・ジョブズが残した“right place, right time”とはこのことだ。 とはいえ不安や心配がなかったわけではない。 「いいことばかりじゃないはずだし、大きな壁にぶつかるだろうと覚悟をしていました。でも、それを恐れはしなかった。むしろ、どう立ち向かっていくべきなのか、そっちのほうに興味がありました。日米の野球はもちろん、文化や風土の違いをあげてもキリがありません。キリのないことを、あれこれ悩むのは意味がない。結局はやってみるしかない」 こう言うと彼は笑った。あの白い歯を見せて。 「結果として、ボストン・レッドソックスはグッドチョイスでした。ファンは野球をよく知っているし、スタッフをはじめ、プレイする環境がすごく整っています。そういう場を与えてもらえて光栄です」 家族もアメリカに同行してくれた。 「妻は管理栄養士やスポーツアロマトレーナーの資格を持っていますから、そういった面でもサポートしてくれています。ふたりの子どもはまだ小さいのですが、やっぱり寝顔を見ると最高の癒しになりますね」 日本ではプライベートの外出もままならなかったが、新天地では人目を気にすることがない。 「家族揃って気軽にレストランに入れるのはいいですね。ボストンでは電動キックボードで球場に通っているし、こんなの日本では考えられないでしょう。そういう意味でも、のびのびとやらせてもらっています」