骨董市のお宝求め外国人が殺到 店主も知らない“謎の骨董”正体は…肩たたき?仏具?
■震災で割れた骨董品
一方、真剣な表情で器を見つめる、アメリカからの観光客・イアンさん。それは、石川県の伝統工芸品「九谷焼(くたにやき)」です。 イアンさん 「僕の家族は和食器のファンなんだ。特に母が大好きなのでお土産を探しています。美しい…」 「“絵付け”が繊細で本当に素晴らしい」 鮮やかな色使いに、華やかな絵付けが器いっぱいに描かれる九谷焼。中でも人気なのは、江戸時代のわずか50年の間にしか作られなかったという幻の焼き物「古九谷(こくたに)」です。 九谷焼のファン 「古九谷って華やかなものと、渋めのものと、個性があって楽しいですよね」 「興味あるんですけど、高くて」 都内にある骨董店では、割れた古九谷がなんと26万円相当で売られていました。 骨董市に出店した店主が取り出した皿も、継ぎはぎされたもの。 骨董店 店主 「能登から出た古九谷なんですけど(地震で)割れちゃいまして。粉々になって、がれきの下になって」 今年の能登半島地震によって、割れてしまった古九谷の破片を能登の業者から買い取り、修復して再生させようとしていました。 実は今、こういった被災地の陶磁器を無償で修復する、話題の匠がいました。
■骨董品を無償で修復 そのワケ
能登半島地震で壊れてしまった骨董品を無償で再生している美術家がいます。 東京・荻窪にアトリエを構える美術家・ナカムラクニオさんが行っているのは「金継ぎ」といい、破損した陶磁器を漆で接着し、金粉で装飾して仕上げる伝統的な修復技法です。 これまで、石川県の被災地から受けた修復依頼は40件以上。すべて、無償で行っています。 ナカムラさん 「これは結婚式の記念に上司がくれて飾っていたらしくて、これだけはどうしても直したいと言って、わざわざ手紙を添えて送ってきてくれたんですけど」 人間国宝が作ったという九谷焼の花瓶。折れてしまった首の部分を修復。金継ぎしたことで、つなぎ目もおしゃれに生まれ変わりました。 一方、こちらは希少な古九谷の花瓶です。 ナカムラさん 「(地震発生日の)元日に飾って、その日に割れちゃった。年に一回しか飾らない…これだけはどうしても直したいって言われた」 バラバラに割れた花瓶は4カ月かけて接着。うっすらと見えるつなぎ目を金粉で装飾していくといいます。 実は、この金継ぎは海外で大人気。壊れたものを再生させる日本の技術は、より価値を高めることもあるといいます。 そんな金継ぎによる修復をナカムラさんが無償で行うのにはワケがありました。 ナカムラさん 「(地震で)自分の家が壊れた経験って人生で初めてだったんですよ。自分も『当事者として何かやらなきゃ』って思ったんです」 ナカムラさん自身も、輪島と珠洲(すず)に作ったアトリエが地震で大規模半壊していたのでした。 ナカムラさん 「器自体も結構長く使っていると、自分の分身みたいに感じると思うんです。だから自分の分身を直すことによって、自分も再生できるって思ってくれたらいいなと思っています」