気温低下とともに増える低体温症患者―室内で発症、命に関わることも
気温の低下とともに、救急外来に運ばれる高齢の方が増えています。その中には、ほぼ毎日のように「低体温症」の方も含まれ、重症の方も多くいらっしゃいます。低体温症というと、冬山のような屋外で寒さにさらされて発症するといったイメージを持たれるかもしれません。しかし、室内でも発症し、重症になると命に関わることもある危険な症状です。夏の熱中症の危険性は浸透する一方で、冬の寒さによる低体温症のリスクはあまり知られていません。低体温症の症状や予防法について知っておき、ご自身や家族を寒さから守ってください。【国際医療福祉大学救急医学主任教授・志賀隆/メディカルノートNEWS & JOURNAL】
◇中等症以上の死亡率は約40%
数日ぶりに実家を訪れたところ、一人暮らしの父親が倒れていた。頭にけがをしていて意識ももうろうとしている。手を触るととても冷たく、体温計では体温を測れない。なんとか呼吸はしているがつらそうなので、急いで救急車を呼んで病院に運んでもらった――。 このような経緯で救急搬送される高齢の方が多くいらっしゃいます。 低体温症とは、体から失われる熱が産生する熱を上回ることで、体の深部体温が35℃以下に低下した状態を指します。 人の体温には「皮膚体温」と「深部体温」の2種類があり、腋など体の表面から測定する温度が皮膚体温、脳や内臓など体の内側の温度が深部体温です。基本的に直腸用の体温計を用いて深部体温を測定し、直腸の温度が35℃以下になった場合に低体温症と診断されます。深部体温は脳や心臓といった生命維持に関わる臓器の温度を反映しているため、一定以上に低くなると命に関わることがあります。一般的に32~35℃が軽症、28~32℃が中等症、20~28℃が重症と分類され、中等症以上の死亡率は約40%といわれています。
◇低体温症予防のポイントは
どのような症状がみられると危険なのでしょうか。 低体温になっても、「元気がない」など曖昧な症状しかみられないことが多いです。ただ、気温が低い中で体が冷えて脳や神経に関する兆候(しびれ、不安定、錯乱など)がみられたら危険です。迅速に暖かい環境に移動することが大切です。 より重要なのは、低体温状態になるのを避けることです。高齢の方に多い低体温症を予防するポイントは以下になります。 ・暖房で室温18℃以上に ・重ね着をして暖かく ・アルコールの摂取は避ける ・温かい食べ物や飲み物を取る ・定期的な運動を ・一人暮らしの高齢の方は定期的な家族の訪問や電話などで状況を確認 それぞれについて詳しく解説します。