フリーキャスター・木場弘子氏、「見ていてくださったことがうれしかった」原辰徳さんの心開いた対話力
フリーキャスターで、前中日監督・与田剛氏(58)の妻・木場弘子氏(59)が6日に「次につながる対話力 『伝える』のプロがフリーランスで30年間やってきたこと」(株式会社SDP、1760円)を刊行した。TBSアナウンサー時代から現在までを振り返り、コミュニケーションの重要性を説いた木場氏は「日常生活でも活用できる内容なので、この中からヒントを探してほしい」と語った。(坂口 愛澄) 華やかなワンピースで登場した木場氏。コミュニケーションをテーマにした同書について「約2年かけて、ようやく完成することができました」と笑顔を見せた。 「本を出版するのは約20年ぶり。コミュニケーションにまつわる本をずっと書きたかったんです。実は予定のページ数よりも3割以上、増えてしまいました」 転校が多かった木場氏は、小学生時代を「コミュニケーションが苦手でした」と振り返る。 「両親が四国出身で『なまりがおかしい』と学校で笑われたこともあって。そんな苦い経験から『二度と人前では話したくない』と思ってしまう方々の気持ちは理解できるんですよね。皆さんが再び対話を楽しむきっかけになってくれたらうれしいですね」 1987年にTBSにアナウンサーとして入社後、同局初の女性スポーツキャスターとしてニュース番組「筑紫哲也NEWS23」に抜てき。だが、新たな道を切り開いていくことは、並大抵のことではなかったという。 「最初は、野球選手の方たちに取材者として認めてもらえませんでした。『え~。今日の取材、姉ちゃんなの?』という感じで。そんな中、(ナイターの時には)午後3時には球場へ行き、練習と試合を見て、番組に出る毎日を続けるうちに少しずつ心を開いてくださいました。監督、選手の皆さんは、取材がある時だけ球場に足を運ぶのか、取材がなくても日々の練習をちゃんと見に来ているのか、そういう点を本当によくご覧になっているんです」 局アナ、フリーキャスター時代を振り返り、印象深いエピソードを問うと、巨人の前監督・原辰徳氏(65)の名が挙がった。 「スポーツキャスターをやっていた当時、原さんはスーパースターで。もちろん、気軽に話しかけるなんてできなかった。でも、40歳の頃、原さんとトークショーに出演する機会があったのですが、『木場さんはすごく苦労された人。当時は女性キャスターなんて誰もいなかった。それでも球場に毎日来て、苦労している姿を僕は見ていました』と言ってくださった。この言葉に涙しましたね。現役時代、一言も話すことはできなかったけれど、見ていてくださったことがうれしかったですね」 唯一無二のスポーツキャスターとして着実にキャリアを積んでいたが、92年の与田氏との結婚を機に、退社を決意。フリーになることに「迷いはなかった」という。 「出産後は2年ほど仕事を休みました。これが非常にいい時間となりました。復帰後は、夜遅い仕事や出張などは避け、子育てを優先してきました」 現在は、フリーキャスターの仕事に加え、講演会で全国を飛び回っている木場氏。聞く人の心をつかむ秘けつは「スタートして5分以内に笑ってもらうこと」だという。 「相手との接点、共通点を見つけて笑ってもらって、共感を得られるように心がけています。場の雰囲気を和ませて、本題に入る感じですね」 一方、依頼を受けた仕事は断らないのが信条だそうで、12もの省庁で委員を務めた。 「最初は専門用語がわからなくて困りました。また、自分がどんな立場から発言したらいいのかと悩みましたね」。今は、等身大で生活者の感覚や広報的視点から自分の立ち位置を見つけ、対話を楽しんでいるという。 知的好奇心にあふれ、思考もポジティブで、パワフルに見える木場氏。だが「元気なのは人前だけなんです。見かけと違って虚弱体質で、エネルギーは3時間が限度なんです」とほほ笑んだ。 最近は、ミニチュアシュナウザーの愛犬・ロッキーが中心の生活だそうで、疲れを癒やしてくれる存在だとうれしそうに明かす。 「(与田氏と)どちらかが出張の時は、必ず一人は家にいるようにしています。一緒に散歩に行ったり、2人で大切に育てていますよ。子供よりも手がかかりますが、これからもロッキーの成長を楽しく見守っていきたいです」 ◆木場 弘子(きば・ひろこ)1964年11月1日、岡山県生まれ。59歳。千葉大教育学部を卒業後、87年にTBSにアナウンサーとして入社。同局初の女性スポーツキャスターとして多数のスポーツ番組を担当。92年に与田剛氏と結婚したことを機に、退社し、フリーに。千葉大客員教授やJR東海などで社外役員を務め、国の会議等にも多数参加している。 木場さんが選ぶおすすめ一冊◆内藤誼人著「世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100」(総合法令出版) おととし手に取り、今でも重宝している一冊です。皆さんが気軽に読める本を紹介したいと思い、書棚からセレクトしてみました。同著では、スタンフォード大、ハーバード大、イェール大など数々の有名大学の行動心理学のデータを基に、解説しています。 100の研究の中には、心にささるエピソードが非常にたくさんありました。今日は、黄色のジャケットを着てきましたが「幸せになりたかったら、幸せホルモンが増加する黄色いものを食べましょう」という項目がありまして。人間は太陽光と同じ色を目にすると幸せな気分になるということで、黄色の服を選んでみました。 主観ではなくて、データで裏付けされているので、より納得させられます。「ホームランの次の打者は死球を受けやすい」など、スポーツにまつわるものも多く、興味深いなという印象を持ちました。生活に結びつく話も多く、楽しみながら読めると思うので、ぜひ手に取ってみてください。(談)
報知新聞社