立憲民主党代表に野田元首相 最大のミッションは「野党連携」
だが、維新は知事選で推薦した兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発された問題の影響で政党支持率が急落し、地盤の関西でも逆風が吹いている。水面下では、野田氏と親交がある維新議員らから生き残りのため「野田代表」を念頭に立民との連携を模索する動きも出始めていた。野田氏なら自民党支持から離れた層の一部を取り込めるとの思惑も野田氏への追い風となった。 23日の記者会見で、野田氏は次期衆院選に関して「自民・公明両党の議席を過半数割れに追い込む。そのために野党の議席を最大化するというのが現実的な戦略だ」と強調した。 具体策については国民民主や維新、共産などを念頭に「それぞれの野党と誠意ある対話を続けたい」と述べるにとどめた。一方で、野党共闘の足がかりとして自民党の政治資金収支報告書に不記載があった議員への対抗馬擁立を急ぐ考えも示した。 ただ、野党連携への道のりは容易ではない。立民の小選挙区の立候補予定者は現時点で190人余り。このうち維新とは約6割、共産とは約5割の選挙区で競合している。野田氏は一部の選挙区で立民側が候補者を取り下げる可能性に言及しているが、立民内から批判が強まる恐れがある。 また、共産との距離感を巡り「対話をできる関係」にとどめようとする野田氏の姿勢に共産は反発を強め、小選挙区の候補者擁立を加速させている。都内など共産との連携に期待する立民議員からは懸念の声が出ており、野田氏の政治手腕が試される。 ●争点は「本気の政治改革」 時間的制約がある中で、衆院選に向け明確な争点や現実的な政策を打ち出し、政権担当能力をアピールできるかも焦点となる。 野田氏は23日夜のNHK番組で、衆院選の最大の争点について「本気の政治改革だ」と指摘。政治資金規正法の抜本改革や国会議員の世襲制限に向けた具体策の検討を進め「自民党の政治文化を壊したい」と強調した。 旧民主党政権が3年余りで瓦解したのは、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策の多くが実現できなかったことと、党のガバナンスが崩壊したことが主な要因だった。 今回の代表選で、野田氏らは政権交代も意識して現実的な政策を訴える場面が相次いだ。例えば、党の綱領に掲げた「原発ゼロ」を巡っては、野田氏も枝野氏も「原発に依存しない社会の実現」を目指すことで足並みをそろえた。 2021衆院選、22参院選の党の公約で掲げた消費税率の引き下げについても野田氏、枝野氏はともに慎重な考えを表明。外交・安全保障政策では両氏ともに日米の同盟関係が基軸との立場を強調し、現政権の外交・安保政策の根本を継続する意向を表明した。ただ、立民内のリベラル系議員からはこうした姿勢に反発の声も出ており、公約策定に向けた党内調整がスムーズに進むかは不透明だ。 安定感があり、論客で知られる野田氏の代表就任で、自民党内では「新総裁には論戦力が求められる」(ベテラン議員)との見方や、「やはり早く衆院解散に踏み切った方が得策だ」(中堅議員)などの声が出ている。終盤戦に入った総裁選に影響を及ぼす可能性も出てきた。 旧民主党が政権を奪った09年衆院選の直前に実施した日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査で、政党支持率は自民党30%、旧民主党が40%だった。直近の24年9月の調査は自民党37%に対し立民9%で、09年との差は歴然だ。短期間で自公政権に代わる受け皿としての期待を高め、結果につなげることができるのか。「本気で政権を取りにいく」と宣言した野田氏はすぐに真価を問われることになる。
安藤 毅