【ネタバレレビュー】山田孝之vs特殊部隊の死闘!そして最大の悲劇が描かれる「七夕の国」第8話
山崎貴監督による映画化に続き、ヨン・サンホ監督によるドラマ化「寄生獣 -ザ・グレイ-」も話題を呼んだ岩明均の人気コミックをドラマ化した「七夕の国」が、ディズニープラス「スター」で独占配信中だ。細田佳央太をはじめ三上博史、山田孝之ら主役クラスの実力派俳優が共演する本作は、東北の小さな集落である人物が消息不明になったことをきっかけに、若者たちがこの地に隠された謎に挑むミステリアスな物語。スリルあふれる展開やちりばめられた伏線が次々に回収されていく痛快さ、登場人物の心の旅を描いた人間ドラマと多くの魅力を持つ作品だ。 【写真を見る】血まみれの惨状で江見が見つけた“あるモノ”が、里の秘密を暴く重要なカギに!? 物に触れずなににでも小さな穴をあける、ささいな“超能力”を持つ大学生、ナン丸こと南丸洋二(細田)は調査中に行方を絶った丸神教授(三上博史)探しを手伝い、講師・江見(木竜麻生)ら丸神ゼミのメンバーと自分の血筋のルーツでもある東北の小さな集落、丸神の里こと丸川町に向かった。そこで地元の少女・東丸幸子(藤野)と出会ったナン丸は、この地では古来より伝わる特殊な七夕祭りが行われていること、そして“手が届く者”と呼ばれる自分と同じ能力を持つ者が時おり生まれていることを知る。 東京に戻ったナン丸たちは、かつて里の神官だった丸神頼之(山田)による無差別テロを目撃。頼之の目的はなんなのか、なぜ丸神の里には“手が届く者”が生まれるのか。MOVIE WALKER PRESSでは、そんな「七夕の国」の全話レビューをお届け。本稿では、答えを求め再び丸神の里に向かったナン丸たちと、その先で体験することになる悲劇が心揺さぶる第8話を、ライターの神武団四郎がレビューする。 ※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。 ■里の人々に喝!ナン丸の成長と変化 町議・早野(谷川昭一朗)をはじめ、丸神の里の人々に温かく迎えられたナン丸と丸神ゼミのメンバーたち。ところが話し合いの席で話題が頼之のテロ行為に及ぶと、突然みんなの口が重くなる。頼之が口にした「悪夢を終わらせる」が意味することは?七夕祭りとの関連は?江見の問いかけに早野は「外部の人にすべてをお話しするわけにはいきません」「いくら考えても(頼之の真意は)わからずでして」と首をかしげて苦笑いするばかり。その態度には憤りすら覚えるが、彼らに喝を入れたのが“若殿”ナン丸だった。拳を畳に叩きつけ「自分たちを守ろうとするばかり、頑なに耳をふさぎ考えるのをやめるのは罪じゃないですか?」と声を荒げる姿に、その場は静まり返った。 これまで物事を深く考えず周囲の意見に流されながら行動してきたナン丸だったが、様々な出会いや出来事をとおし、いつしか彼のなかには強い責任感が芽吹いていた。初めて見せた主人公らしい凛々しさに、思わず固唾をのんだ。これまでにない目力で演じた細田佳央太の気迫と、静まり返った室内に亜紀(鳴海唯)が「…ナン丸先輩」と思わず漏らしたひとことのタイミングもドンピシャ。ナン丸の圧に押され、早野は彼らを東丸家の当主・東丸隆三(伊武雅刀)に面会させることを約束した。果たして当主がナン丸たちになにを明かすのか、期待が膨らむ。 その晩、ナン丸たちはそれぞれの想いを胸に静かに夜を過ごしたが、ここでささやかな見せ場を作ったのが江見。いちばんの年長者で、つねにてきぱきと気丈にふるまう彼女だが、その言動にはつねに丸神教授への想いが透けていた。隆三との面会に教授が同席すると知らされ、1人彼からの手紙を読み返し、署名を指でなぞるしぐさに乙女な一面をのぞかせる。翌日、早野らが迎えに来るとさりげなく教授の姿を目で探したり、教授とは隆三の屋敷で合流すると聞かされ肩透かしを食らう挙動も愛らしい。 屋敷への道すがらでは、早野がゼミ生・多賀(濱田龍臣)が作った丸神の里の精密な模型を称賛。あの模型のおかげで、教授はなにかしら里の秘密を解明できたらしいことを言い添えた。多賀は模型を仕上げた時に、山の形が不自然だと語っていたがどうやら地形も里の秘密に関係があるようだ。また新たなポイントが明らかになった。 ■幸子の慟哭に胸が締め付けられる…そして残された新たな“カギ” いっぽう頼之と高志も密かに里に戻っていた。ナン丸たちが来るとも知らず、彼らは隆三のもとを訪問。驚く家政婦をしり目に勝手に屋敷に上がり込み、隆三と対面した。そこで頼之は建設会社の社長を殺害した時、里を離れて4年もの月日が経ちながら自分がこの地に囚われ自由になれないことを改めて悟ったことを明かす。根本を覆し悪夢を終わりにしなければならない、と。淡々としたなかに強い決意あふれる語り口は山田孝之の真骨頂。そんな頼之を「やけくそにしか見えねえ」とたしなめる隆三に、何百年にわたって行われてきたこと、おそらく七夕祭りがただの「大間抜け」だと判明するかもと返す頼之。その言葉から隆三は、頼之の真意を確信した。 すべての核心に触れる瞬間が訪れたと思われた次の瞬間、物語は怒涛の展開になだれ込む。頼之と決別した増元(深水元基)が部隊を率いて隆三の屋敷を取り囲み、自動小銃を手になだれ込んできたのだ!武器商人や裏の仕事屋として暗躍してきた増元だが、まさか特殊部隊まで指揮するとは…。容赦なく銃を撃ちながら迫りくる隊員に“●(まる)”で応戦する頼之と高志。これまで謎解きを軸に展開してきた物語が、いっきにアクションへとシフトする。湧き出るように押し寄せてくる隊員たちに、動じることなく大小様々な“●”を次から次に繰りだしていく頼之。そのスキルの高さに舌を巻くが、応戦する2人の姿に漂うのは爽快感ではなく悲壮感。テロリスト認定された頼之をつぶしにかかる権力サイドの容赦のなさが、あらゆるものを破壊していく隊員たちの行動を通しひしひしと伝わってくる。 そして一瞬の油断から何発もの銃弾を浴び「まじでやばい」とつぶやきながら倒れ込む高志。第7話では幸子への詫びの言葉をナン丸に託す姿が描かれたが、死を前に頼之にも妹への伝言を託そうと必死に言葉をつなぐ姿に彼の想いがあふれでる。駆け付けた幸子が血まみれの兄と対面し泣き叫ぶ姿に、東丸家を襲った悲しい運命に思いを馳せずにいられない。やわらかい日が射し込む竹林の幻想的なロケーションも相まって、悲しくも美しいシーンになっている。 頼之の想いを悟った隆三も殺され謎の行方も遠のいたと思われたが、彼の屋敷で江見は頼之が扉に触れた時につけた血まみれの手の跡を見て衝撃を受ける。小指の横にもう一本親指が生えた彼の手形は、丸神の里に伝わる“かささぎの旗”のかささぎそのものだったのだ。それが意味するものはなにか、そして屋敷で合流できなかった丸神教授は一連の事態にどう関わっているのだろうか?里の秘密に王手をかけますまる盛り上がる「七夕の国」。次にナン丸たちを待ち受ける展開に期待せずにいられない! 文/神武団四郎