狩猟ノウハウ伝承へ 静岡県猟友会、体験ツアーで担い手発掘、課題解決へ力「まずはレジャーの一環で」
農作物に被害をもたらすイノシシやシカなどの鳥獣駆除に貢献している静岡県猟友会の会員の高齢化が進み、狩猟ノウハウの伝承が課題になっている。2024年2月末時点で同会に所属する3195人のうち、70歳以上が46%、60歳以上で63%を占める。アウトドアレジャーやジビエ人気が高まる中、担い手確保と発掘を目指す同会などが初心者講習会や体験ツアーに力を入れている。 5月に静岡市葵区北沼上で静岡猟友会わな部会が開いた「狩猟体験ツアー」には社会人や大学生など幅広い年代の23人が集まった。 県立農林環境専門職大(磐田市)3年の古賀星(あかり)さん(20)は大学の授業の一環でわな猟の免許を取得したが実践の機会がなく、同級生4人と参加した。同免許を学生時代に取得した静岡市葵区の会社員鷲山楓さん(25)は「山に入って経験を積みたいが一人では難しい」と話し、仲間作りにもつながるツアー企画を喜んだ。教育の観点から職場の同僚と参加したのは静岡サレジオ中高(同市清水区)の吉川牧人教諭(50)。害獣駆除の意義を学び、学校現場への還元を図る。 同部会の坂田勝幸さん(52)が講師を務め、参加者に獣道の見分け方やくくりわなの製作、イノシシの解体方法などを丁寧に指導した。坂田さんは「まずはレジャーの一環として狩猟を楽しんでもらい、狩猟免許取得に興味を持ってもらえたら」と期待する。藤枝市から高校生の息子と参加した寺岡真さん(49)は「狩猟やジビエには敷居の高さを感じていた。分かりやすく教えてもらえたので、将来は親子で免許取得を目指したい」と話した。 県猟友会でも2020年から、猟期に新人ハンター向けの研修会を開催している。同会の杉山厚吉事務局長は「職人気質が漂うベテランと若手が交流する大切な機会」と説明した上で、「今後は猟師の長年の経験を伝える指導者の育成も必要」と指摘する。
静岡新聞社