大赤字の『VIVANT』とNetflixで世界的ヒットの『忍びの家』 両者の明暗が分かれた理由
2月15日に都内で開催された『ロケーションジャパン』の授賞式での福澤克雄監督が話題となった。福澤監督は大ヒットドラマ『VIVANT』(TBS系・’23年)の続編について、《続編は決まってませんし、僕には決められないんです》と、大赤字が原因で続編の製作が難しくなっていることを明らかにしたのだ。その最たる理由は、1話1憶円とも言われる巨額の制作費を投じながら、海外での評判が芳しくなかったことのようだ。 【カワイイ!】『VIVANT』でもキーマンを演じた〝あの新人女優〟 「昨年12月からNetflixでの配信がスタートしましたが、日本以外の国では、台湾で1週だけトップ10に入っただけ。世界評価の目安の一つとなっている『IMDb』でも、スコアは7.2。評判が良かった作品は7点台後半から8点台を取っていますから、物足りないと言わざるを得ないでしょう」(制作会社スタッフ) 不発だった原因はいろいろと言われている。世界に通用するドラマを作ろうとスケールの大きい“陰謀ものサスペンス”に挑戦したものの、世界においてはこの手の作品は珍しくなかったこと。物語のディテール設定が雑。はたまた恋愛の描き方がイマイチ、等々……。 とはいえ、映画だけでなくドラマもグローバル化が進む昨今。国内だけでなく世界でヒットする作品を作っていくことは、もはや必須課題となっている。『VIVANT』もそういった焦りを抱いての挑戦だっただけに、この結果はしっかり受け止め分析する必要があるだろう。そんな中、『VIVANT』のお株を奪うようなドラマが、彗星のごとく登場して話題となっている。 「2月15日からNetflixで配信がスタートした、賀来賢人(34)主演の『忍びの家 House of Ninjas』です。タイトルからも分かるように忍者ものですが、今まであまり見たことのない新しい忍者ものなんです。 物語は、密かに続いてきた“忍び”の一族が、国の秘密組織として国家の危機を救うべく暗躍する、というもの。忍者といえば日本独自のカルチャーで、世界でも人気で認知度は高い。それを現代に持ってきて、かつコミカルではなく正統派な陰謀ものサスペンスアクションとして描いているんです。それゆえどこかエキゾチックで惹き込まれます。 実際、配信後は多数の国で1位を取っただけでなく、何と100近くの国と地域でトップ10入りしている。完全に『世界に通用した』と言っていいのではないでしょうか」(エンタメライター) ジャンルは同じ陰謀ものサスペンス。では一体『VIVANT』とは何が大きく違ったのだろうか。ドラマ事情に詳しいコラムライターは次のようにコメントしている。 「まずはやはり、忍者という日本独自のカルチャーを軸に据えたことでしょう。そこにクオリティの高いアクション、敵対勢力によるテロものという、世界が分かりやすい要素を加えた。ただこれだけなら、『VIVANT』に登場する自衛隊の秘密組織“別班”が忍者に変わっただけとも言えます。 しかし何より違うと感じたのは、『忍びの家』は日本の精神を丁寧に描いていたことです。日本独特の家族のしがらみ、伝統やルールに縛られ身動きできなくなっている苦しさ……。『忍びの家』は監督がアメリカ人であるだけに、こういった日本社会の苦悩みたいなものが、とても哲学的に描かれているんです。個人的にはむしろ忍者よりも、そこに一番この作品の日本らしさを感じましたね。 今回の『忍びの家』の成功には、日本のドラマの可能性を感じました。この成功理由をしっかり分析して取り入れれば、『VIVANT』の続編もまだまだ諦める必要はないのではないかと思います」 日本ドラマの世界挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://twitter.com/FRIDAY_twit 取材・文:奈々子 愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター
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