仕事のコミュニケーションが苦手な人の特徴と克服方法【プロが伝授】
「職場のコミュニケーションが苦手」「お客様との会話がかみ合わない」など、仕事シーンでのコミュニケーションになるとうまくいかないと悩む人は少なくありません。プライベートでは問題ないのに、なぜ仕事ではうまくコミュニケーションが取れなくなってしまうのか。仕事をスムーズに進めるための対処法について、コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さんに話を伺いました。
仕事のコミュニケーションが苦手な人の特徴
仕事をスムーズに進めるためには、周りの人とのコミュニケーションは必要不可欠となります。とはいえ、コミュニケーションの悩みは人それぞれ。「上司がいつも無茶ぶりをしてきてしんどい」「同僚から、情報共有が遅いと指摘される」「会議の場でも、なかなか自分から意見を伝えられない」など、仕事場面でのコミュニケーションの悩みは尽きません。 では、そもそも「仕事のコミュニケーションがうまくいかない」とはどういう状態なのか。多くの場合、「アサーション」がうまくできないことが理由にあります。 ◆コミュニケーションを円滑に進める「アサーション」 アサーションとは、「さわやかな自己主張」という意味で訳されている言葉です。「相手と対等な立場に立ち、自己主張をするためのコミュニケーション方法」を指します。相手の意見や主張を否定して無理やり意見を押し通そうというのではなく、相手の価値観を尊重した上で、自分の意見を言葉にしていくコミュニケーションスキルのことです。 例えば、上司から「明日までにこの資料をまとめておいて」など、無理な仕事をお願いされたとしましょう。アサーションがうまくできると、自己主張しつつも相手との折衷案を探していくことができます。 「今日は残業できないのですが、明日午前中早めでの対応でも間に合うようでしたら、11時までに仕上げます」「今日これから30分は時間が作れるので、そこでできる範囲でも良いですか」など、自分ができる対応の範囲を主張しながら交渉ができます。 しかし、強く言われると断れなくなり、我慢して残業する人は多いです。自己主張を言葉にできないことで不満がたまり、「上司がわかってくれない」「自分にばかり無理を押し付ける」と感じ、関係がギクシャクすることにつながってしまうのです。 では、うまく自己主張ができない理由には何があるのでしょうか。コミュニケーションに対する苦手意識には、「自己肯定感の低さ」が大きく影響しています。 ◆コミュニケーションが苦手な人の背景にある、自己肯定感の低さ 自分の意見を的確に言葉にできず、無理難題も我慢して受け入れてしまう──そのように相手に対して従順的に接する人の多くは自己肯定感が低いです。「自分には価値がない」「自分の意見は重要ではない」という思い込みが邪魔をしてしまうのです。 自己肯定感が低いと、相手の顔色や反応を伺い、「自分がどう思われているのか」に常に関心を割くことになります。“自分が価値のない存在であることがバレないように”と、低く評価されるのを怖がるがゆえに、昇進を断ったり、責任あるポジションに就いたりするのを嫌がる人もいます。 従順的な人とは真逆のタイプとして、反抗的パターンでコミュニケーションを取る人もいます。例えば、マウントをとって勝ち負けにこだわる、周りからの批判や指摘を受け入れずに逆ギレするなどのタイプです。 このタイプは、自分のすごさを相手に見せつけておかなければ「自分が価値ない存在だということがバレしてしまう」という不安があり、常に安心できません。また、態度もこのタイプは威圧的なため、「あの人、苦手です」と敬遠されてしまうことも多いです。 従順的パターンと反抗的パターンは、まったく違う人のように見えますが、実は自己肯定感の低さでは共通しています。 「自分には価値がない」「本当は大した人間ではない」という思い込みが、両極端の反応となっているだけです。相手と対等な立場で自己主張をし合うアサーションのスキルを、うまく使うことができません。必要以上に我慢してしまうか、あるいは必要以上に自分の存在価値を誇示することで、相手をコントロールしようとしてしまうのです。