「こんなの社長しかいない!」会社公式に身バレされた社長 きっかけは〝裏アカ〟で投稿した1枚の画像
「これ社長ですね?」
SNS担当者は、溶接は未経験でした。しかし、社長の仕事をずっと間近で見てきました。 「溶接歴28年」の社長は、配管をぐるりと一周、手作業で継ぎ目なく溶接します。その溶接の表面には、半月型のような波模様が一定のリズムで現れるのです。本来なら、呼吸一つ、手の震え一つで、乱れてしまう波模様。 波模様が示す〝きれいな溶接〟には、いちいち細かくは言わない社長の熟練の技とこだわりが詰まっていました。 SNS担当者はこの1年、「材料も商品も『赤ちゃん』のように大事にする社長の溶接を、もっと多くの人に見てもらいたい」と思って、会社の公式Xを続けていたのでした。それなのに…。 「最強Tig兄ィィィ」のアカウントをパトロールしながらSNS担当者は、あきれて笑ってしまいます。「やっぱりきれいだなぁ」 そして社長を問い詰めました。「これ、そうですよね? これ社長ですね?」
「一つ聞いてもいいですか」
社長の裏アカでの投稿は、悔しいことに会社公式よりも多くの人が見ていました。うらやましくなったSNS担当者は、社長に直談判しました。「こういうのは会社の方で出してください」。気圧された社長は、「どうせ見る人もいないだろうから、いいよ」と、あの話題になった投稿の「引用」を認めたそうです。 SNS担当者が、「今後は会社の方でやってほしいな」との願いを込めて投稿した〝身バレ〟ポスト。その反響は予想外のものでした。わずか1日で、フォロワーは倍以上に。溶接に関心がなかった人まで、投稿からにじみ出る社員と社長の和気あいあいとした雰囲気に好感を持ち、目標の「1000フォロワー」をあっという間に達成してしまいした。SNS担当者は「とにかく驚いています」「全然、バズらせるつもりもなかったんで…」。 井出社長は「今回は、誤爆みたいな形になっちゃったんで……」と恐縮しつつ、「溶接って地味じゃないですか。やりたがる人も少ないのかなって思ってたんで……。興味が沸いた人がいてくれたようで、うれしかったです」と話します。 そして井出社長は「一つ聞いてもいいですか」と、反対に記者に質問しました。「4万ハート? いいね? って、なかなか起きないことなんですか?」 まだ「バズってる」ことにピンと来てない様子です。
〝裏アカ〟に起きた変化
身バレした裏アカは、これから、どうするのでしょうか。 井出社長は「んーーーー。どうしたらいいんですかね…」「公式よりも気楽で…」と煮え切らない返事。 SNS担当者は「個人のアカウントも、やめずに続けると思うので」と諦めた様子で笑い、「会社の方で引き続き、リツイートしていこうと思います」と話しました。 取材後、「最強Tig兄ィィィ」は、アカウント名を「最強Tig兄ィィィ(社長)公式」と変更していました。「会社公式」とのやりとりは、これからも続きそうです。