マーリンズの来季構想にイチローは生き残るのか?
イエリッチは来季以降、2021年まで4年総額4325万ドル(約48億円)の契約が残る。まだ25歳で、3割、20本、100打点を将来に渡って期待できることを考えれば、これは格安だろう。今回、2年連続でオールスターに選ばれたオズナは、フリーエージェントになるまで、あと2年ある。それまではこのクラスの選手にしては安く契約できる。しかし本来、トレードバリューがあるのはこうした選手。マーリンズが、将来を約束されているような先発投手を獲得したいのだとしたら、彼らを犠牲にするぐらいの覚悟が必要だろう。 スタントンに関しては、欲しいチームがあれば、というところだろうが、彼の契約がその妨げになっている。2014年に結んだ13年総額3億2500万ドル(約357億円)の契約は、来季から年俸が跳ね上がり、来季以降、10年で2億8500万ドル(約313億円)の支払い義務が残っている。マーリンズが相当額を補填しない限りトレードは難しいが、今行われている売却交渉で、スタントンのトレードを迫られている可能性もある。新しいオーナーにしてみれば、スタントンのような大型契約を引き継ぐリスクを避けたい。 いずれにしても、仮に外野手3人の内、一人でもトレードされれば、イチローにも影響があるだろう。ただ、単純に考えれば、出場機会が増えると予想できるものの、トレードで若い外野手を獲得し、チームがその力を試したいということであれば、その若手が優先起用される可能性があるため無条件とはいえない。先ほど触れたリーにもチャンスが与えられるのではないか。そうやってチームは将来に向けてシフトしていく。 その将来の構想にイチローが含まれているかどうかは、15年にイチロー獲得を主導したジェフ・ローリアオーナーが、遅かれ早かれいなくなるので不透明だ。彼が、チームを売却する前に球団が持つ来季のイチローのオプションを行使することは可能だが、そこまでは見通せない。新しいオーナーが誰になるか分からない状況では、彼らがどんな構想を描いているかも分からない。 トレード期限までは、あと2週間ちょっと。その2週間でどんな動きがあるのか。来週には売却問題が決着するとも報じられており、ここにきて、買収グループの一つを率いるデレク・ジーターにあのマイケル・ジョーダンが加わったとも明らかになっている。おそらく今、イチローも含め、来季もマリナーズのユニホームを着ていると保証されている選手は誰一人としていない。彼らは今、迫り来る変化にじっと身構える。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)