寛一郎、マタギ役の主演オファーを「断ろうと思った」 猟友会と山中へ「ものすごいスピードで」
雪が残る山中で撮影「1時間半ぐらいかけて登るか、降りるか」
実際の撮影は昨年4、5月に約3週間をかけた。 「毎日ではないんですけど、朝早い時は4、5時に出発して1時間半ぐらいかけて、山を登るか、降りるかする。春とはいえ、まだ雪も残っていますし、足元が危ない。昼はお弁当で、トイレは雪山のどこか。まだ日が短かったので、思ったよりも撮影できる時間はなかったように思えます」 劇中で熊を追って、雪山を歩く礼二郎と信行の姿には演技を超えたものが映っているようにも思える。 「そう言っていただけると、うれしいです。演じている人間も、雪山に身を置くことによって、ヒートアップさせてくれた部分もあるんじゃないかな。その一方で、山の中にただいるだけで、成立してしまう怖さもありました。演者としては、いろいろとやろうともしましたけど、いることに真実が見えてくるんじゃないかと感じました」 ダブル主演を務めた杉田雷麟(21)は19年、映画『半世界』(監督・阪本順治)で稲垣吾郎演じる主人公の息子役を演じ、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第34回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞し、『福田村事件』、主演作『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(2024年)など話題作が相次ぐ注目株だ。 「雷麟君とは縁があるんです。父親(佐藤浩市)が彼のデビュー作『Aではない君と』(息子役)というドラマに一緒に出ていたので、名前だけは知っていたんです。しばらくたったら、周りでも名前を聞き始めて……僕も阪本監督の『せかいのおきく』に出ましたから。どこかでご一緒できるかなとは思っていました」 6歳下の後輩俳優にはかつての自分を見るような思いもある。 「自分が忘れかけているものを持っているし、もっと学ばなきゃいけないことをもちろんある。そういう意味でも、その礼二郎とノブじゃないけど、どこか補い合っていたのかなとは思います」 本作では杉田とのダブル主演。これまで映画では『君がまた走り出すとき』『下忍 赤い影』(19年)での主演経験はあるが、「幸せなことですが、主演は大変だなと思います。頭に立つからには、作品を背負わなきゃいけない。多少、人とぶつかることがあっても、作品を良い方向に導かなければいけないから」と寛一郎。9月13日公開の映画『シサム』では江戸時代、アイヌとの交易を通じて、人生を見つめ直す主人公を演じる。 □寛一郎(かんいちろう)1996年8月16日、東京都出身。2017年、『心が叫びたがってるんだ。』で映画初主演。『菊とギロチン』(18)ではキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞など多数受賞する。22年には出演作『ホテルアイリス』『月の満ち欠け』が公開されたほか、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演。さらに、23年には初舞台『カスパー』で主演を務めた。主な出演作は『チワワちゃん』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『劇場』(20)、『泣く子はいねぇが』(20)、『AWAKE』(20)、『せかいのおきく』(23)。今後も『ナミビアの砂漠』(9月6日)、主演『シサム』(9月13日)、『グランメゾン・パリ』(冬)が控える。
平辻哲也