長男は奨学金を借りずに大学に通っていますが、お金に余裕がないので次男には奨学金を借りてほしいです……。次男にだけ奨学金を返済させるのは申し訳ないのですが、親が返済する奨学金はありますか?
大学にかかる学費をどのように負担するかは、各家庭でさまざまです。兄弟姉妹がいる家庭の場合では、親としては「子どもにはなるべく公平に支援したい」という気持ちがあっても、家計状況によっては思うようにできないこともあるかもしれません。 本記事では、奨学金を使っても親に学費の負担をしてもらえるのか、解説します。 ▼「大学無償化制度」の対象者とは? 年収要件や注意点を解説
奨学金制度とは
奨学金制度は、経済的な理由で進学が難しい学生に、国や自治体、大学、企業などが奨学金を給付または貸与する形で進学を支援する制度です。独立行政法人日本学生支援機構の「令和4年度 学生生活調査結果」によれば、学生のおよそ半数以上が奨学金を利用しています。 例えば、奨学金の利用者が多い(令和4年度は学生のおおむね3人に1人)日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、大きく分けて「給付奨学金」と「貸与奨学金」の2種類があります。給付奨学金は返済義務がなく、一方の貸与奨学金は返済が必要な奨学金です。つまり、給付奨学金は「もらえるお金」で、貸与奨学金は「借りるお金」です。 ■給付奨学金 給付奨学金は返済する必要がないので、学生本人や親の学費負担を減らすことができます。ただし、「住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯」などといった収入基準や、「高等学校などで全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上」などといった学力基準を満たしている必要があります。 ■貸与奨学金 貸与奨学金は、返済が必要な学生本人が借りて、卒業後に学生本人が返していくことになるお金です。貸与奨学金には、図表1の3つの種類があります。 図表1
独立行政法人 日本学生支援機構 「貸与奨学金(返済必要)」をもとに筆者作成 貸与奨学金は、給付奨学金よりも収入基準などが緩やかで利用しやすいですが、学生本人の借金となるため、将来返済していけるか、しっかり検討する必要があります。
学費に対する不公平感を減らすために親ができること
大学進学時の家計状況によっては、全ての学費を親が負担するのが厳しく、どうしても子どもに奨学金を利用してもらうしかない場合もあるかと思います。しかし、貸与奨学金はあくまで学生本人が借りるものであり、親が返済人となれる貸与奨学金はありません。 そのため、子どもが複数人いるような家庭の場合、「一部の子どもの学費は親が出してくれたのに、その他の子どもは奨学金を借りて自分で将来返済しなくてはならない」となると、奨学金を借りた子どもには不公平感が生じるかもしれません。 そういった不公平感を少しでも減らすために、次のようなことを親ができないか、家族で検討してみましょう。 ■奨学金の返済の肩代わりをする 奨学金を返済するのはあくまで子どもなので、親は返済人にはなれません。そのため、親がその返済を肩代わりするために、返済額と同等の金額を子どもに渡し、子どもがそのお金を返済に充てる方法が考えられます。 ここで注意が必要なのは、「返済の肩代わりに渡したお金には贈与税がかかる」という点です。返済の肩代わりは「債務引き受け」と見なされ、他の贈与と合わせて年間110万円を超えると、贈与税が発生します。贈与税は受け取った側にかかるため、このケースでは年間110万円を超えた分があると、子どもに贈与税がかかります。 ただし、子どもの扶養義務者である親が奨学金の連帯保証人となっていて、子どもが資力を喪失して返済をすることが困難であるときは、贈与税がかからない場合があります。 ■教育ローンを利用する 教育ローンは、子どもの進学資金や学費に充てるために、親などの保護者が利用するローンです。奨学金と違い、お金を借りるのは親であり、返済していくのも親となります。 教育ローンには、日本政策金融公庫が行っている「国の教育ローン」と、銀行などの金融機関が行っている「民間の教育ローン」があります。民間の教育ローンは子どもの教育費関連だけでなく、社会人の学び直しのためにかかる資金にも利用できます。 一般的に、国の教育ローンのほうが民間の教育ローンよりも低金利です。ただし、審査基準は民間の教育ローンのほうが比較的緩やかで借りやすいといえるでしょう。 なお、奨学金と教育ローンは併用可能です。そのため、両方を利用して親子で返済負担を分け合うことも検討できます。 ■余裕ができたときに別の形で支援してもらう 奨学金を借りた子どもが卒業して社会人になったあとも、結婚や家の購入など、費用のかかるライフイベントが起こることが考えられます。 進学時には学費負担ができなかったとしても、そのようなライフイベントの際には、親として支援ができるかもしれません。もしくは相続のときに、進学資金を出した兄弟姉妹よりも、相続割合を多くするといった対処法も検討できます。 家計状況から、進学のタイミングでは奨学金に頼らざるを得なかったとしても、お金の余裕ができたときに別の形で支援してあげれば、兄弟姉妹の不公平感は減らせるかもしれません。