体操ニッポン金メダル奪回へ 水鳥強化本部長が語ったパリ五輪のキーパーソンと、宿敵・中国撃破への糸口
体操のパリ五輪代表選考会を兼ねて、個人総合で争うNHK杯は16日から4日間、高崎アリーナで行われる。体操ニッポンの黄金期の再構築へ、2016年リオデジャネイロ五輪以来、2大会ぶりの団体金メダルの奪回を目指す男子の水鳥寿思・強化本部長(43)が13日までにスポーツ報知の取材に応じ、最後の戦いとなる激烈な代表争いの展望を語った。金メダル争いでは、最大のライバルに中国を指名。中国との一騎打ちへ、日本の戦略も明かした。(取材・構成=小林 玲花) ニッポンのお家芸「体操」。水鳥強化本部長が団体、個人総合、種目別の全てで金メダルを目標に掲げるパリ五輪の代表選考会が、いよいよクライマックスを迎える。21年東京五輪2冠の橋本大輝はすでに決定し、残るは4枠。4月の全日本を終え、複数の選手が僅差の大接戦。最後まで白熱の戦いが予想される。 「率直に五輪選考会は、他の大会以上にシビアで厳しさを感じる。全日本では代表に入ってもおかしくない選手が崩れたり、一方で34歳の田中選手が6位に入ったり。これは良い意味で想定外だった。30代を超えてなお、美しさは洗練され、Eスコア(出来栄え点)が厳しい傾向にある今の採点基準では強い。全日本の上位6人に、チーム貢献度での候補を含めると、約8人ほどに絞られたと感じる」 全日本上位の中でも、特に注目は2位につけた20歳の岡慎之助。「非の打ちどころがない」と語る期待の逸材が、五輪の団体王者返り咲きへ、カギを握っているかもしれない。 「岡選手は橋本選手と並ぶくらいの力を持っている。基礎的な体操の正しい動きをこなし、一つ一つが美しく、さらに全てのレベルが高い。覚醒すれば、個人総合で金メダル争いをするポテンシャルはあると思っている」 最大のライバルとなるのは中国。つり輪では一人あたり、1点近くは離される強さを誇り、平行棒には異次元の16点台を出す鄒敬園、さらに個人総合で橋本と張り合う張博恒と、個々のすさまじい能力と爆発力が日本にとって脅威。残り3か月を切り、どのように立ち向かうのか。 「中国はハイリスク・ハイリターンのような形。各選手のポテンシャルは認めざるを得ないが、本当にピンポイントで勝負できるのかは難しい。日本は選手層が厚く、個々の対応力も高い。日本はミスをせず、徐々にプレッシャーをかけていく」 「0・103」。この数字を忘れたことはない。東京五輪の団体は、ROCにわずかこの点差で敗れ、銀メダルだった。その悔しさはパリでしか晴らせない。 「勝てなかったのは、僕の責任だった。あと0・1だったら何かできたところはあったんじゃないかと思う。選手たちも、絶対にパリでは金メダルを取り返したいって思いでやっている。必ず、実現させたい」 ◆体操男子の21年東京五輪 団体では、萱、谷川航(セントラルスポーツ)、橋本、北園丈琉(徳洲会)の4人で臨み、ROC(ロシア・オリンピック委員会)に0・103点差で銀メダル。当時19歳の橋本は個人総合で五輪史上最年少王者に輝き、種目別の鉄棒でも金メダル。種目別のあん馬では萱が銅メダル。4度目の五輪の内村航平は、種目別の鉄棒に絞って出場も、予選で落下し20位で予選落ちした。
報知新聞社