コウテイペンギンをオーストラリアで初めて発見、なぜ遠く離れた大陸に? 専門家に聞いた
なぜ遠く離れた大陸に?
「ガス」は生きて動いている状態で発見されたが、背骨が浮き出て見えるほど著しく痩せていたと、オーストラリアの生物多様性保全観光資源局(DBCA)の野生動物リハビリ担当者は言う。「ガス」が完全に健康を取り戻し、慣れ親しんだ海域に戻されるほどになるには、おそらく数週間のリハビリが必要だろう。 なぜこのペンギンがそこまで遠く離れた場所にたどり着いたのか、その原因を突き止めることは別の課題だ。専門家は、嵐により進路を外れて方向感覚を失った可能性や、他の航行感覚が何らかの要因で阻害された可能性などを示唆している。 コウテイペンギンが生息地から遠く離れた場所で目撃されたのは、今回が初めてではない。2011年には、ニュージーランドの海岸にコウテイペンギンが上陸しているのを住民が目撃したと報じられた。 また、2002年には、南米を生息地とするフンボルトペンギン(Spheniscus humboldti)が米アラスカで発見された。おそらく漁船に潜りこんだのだろう。 海鳥が遠方の地に上陸するケースは稀だが、「ガス」の事例は南極の環境が急速に変化し、南極に生息する種がどのような影響を受けているのかを示唆しているのかもしれない。例えば、コウテイペンギンは繁殖のために安定した海氷を必要とするが、気候変動により棚氷の融解が進むにつれ、今後数十年で急速に減ると予測されている。 大規模な環境の変化と餌の減少が相まって、一部の動物は以前よりも遠くまで餌やすみかを求めて移動しなければならなくなっている。今回のような珍しい事例が現時点では大きな傾向を示しているわけではないものの、専門家は迷鳥が将来的な生息域の拡大を予測する指標になることもあるため注意すべきだと、ヤングフレッシュ氏は言う。 「こうした事例の頻度が増えれば、コウテイペンギンに何かしらの変化が起きていることを示している可能性があります」
文=Tatyana Woodall/訳=杉元拓斗