【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】第15回 vs北朝鮮、板倉が語る"未知"との向き合い方
W杯アジア2次予選で、北朝鮮との厳しい戦いを繰り広げたサムライブルー。未知の相手、環境と向き合うとき、板倉はどのようにメンタルを整えるのか? ■11年の北朝鮮戦での仰天エピソード 満員となった大きなスタジアム、耳をつんざくような歓声あるいはブーイング。それらが人生初のシチュエーションであれば圧倒されてしまうことだろう。 僕もかつてはそうだった。そんなとき、ブレないメンタルを保つにはどうすべきか。今回は、未経験の重圧や環境にのまれないための心構えについて語ってみたい。 僕にとって"初"といえば、W杯アジア2次予選で戦った北朝鮮もまさにそうだ。圧倒的な運動量に加えて、球際の強さ、ボールが見えない所での駆け引き、イエローカードも厭わないハードなプレー。厳しい戦いになることは覚悟していたが、フタを開けてみれば、想像以上だった。 もしアウェーゲームが行なわれていたら、未知の経験を山ほどすることになったはず。北朝鮮への渡航経験はなく、当然ながら現地で戦ったこともない。いったい、どんな国なのか、環境面はどうなっていたのか......。 2011年11月15日、W杯ブラジル大会3次予選。日本は北朝鮮の首都・平壌の金日成競技場で戦った。結果は0-1で敗北。当時同行したスタッフに、僕らは前もって様子を聞いていた。 まず、北朝鮮に入る手前ですべての電子機器を置いていくことになったという。携帯、パソコン類は一切持ち込み禁止。これを聞いた瞬間、愕然とした。 何せ、中3のときに親から持たせてもらって以来、スマホは常に肌身離さず持っているもの。移動のお供に大活躍してくれるiPadもNGとなったら、いったいどうやって過ごせばよいのか。僕にとっては死活問題だ。 さらに、平壌空港に到着後、徹底的な手荷物検査を受けたため、日本代表は約5時間の足止めを食らったそうだ。さすがに前日練習の時間が確保できないと判断、スタッフは選手たちを先に練習場へ行かせたという。 そして、スタジアム。これがまたすごかったらしい。約5万人の観客が何時間も前から集合、寸分乱れぬ応援指導を実施。加えて軍兵士による警備態勢を敷き、物々しい空気に包まれていたという。まさに国家一丸の態勢だ。 試合に入る際、北朝鮮のコーチ陣から選手へは、「殲滅するぐらいの気迫で臨め」と指示が出されたらしい。実際、激しいプレーの連続で、あわや乱闘になりかけた場面もあったそうだが、日本代表のスタッフが選手たちを必死になだめたのだとか。 金日成競技場のピッチは、人工芝だと聞かされている。そうだとしたら、これも慣れていないと非常に厄介だ。 というのも、天然芝であれば、地面が軟らかいため、切り返しをする際にスパイクがめり込んでターンができる。特に、ヨーロッパのピッチは軟らかいことが多いので、接地するときに足への負荷はさほどかからない。 一方、人工芝の場合は地面が硬いため、クッショニングがなく、足への負荷が非常に懸念される。そのほかにも想定外のことは多々起こるはずだ。