「弾薬庫は攻撃受けても壊れない」と言われても。地域活性化の起爆剤へ期待も交錯…整備決定の知らせに住民の思いは揺れる さつま町
防衛省は27日、鹿児島県さつま町の中岳周辺(永野、中津川)に弾薬庫(火薬庫)を整備することを明らかにした。「活性化の起爆剤」「住民を無視した進め方」。適地調査開始から半年での決定に、地元では歓迎と批判の声が交錯した。 【写真】〈関連〉さつま町の位置を地図で確認する
中岳の麓に位置する南川公民会の上別府裕人会長(67)=同町永野=は「思いのほか決定が早く驚きもしたが、国の施策なので受け止めるしかない」。少子高齢化で寂れるばかりとし、施設整備による地域振興を期待する。 一方で集落の飲料水はほぼ中岳から引いており、水量や水質への影響を懸念する。「何らかの問題がある場合は、相応の配慮を国や町に求めたい」と話した。 整備に反対する同町中津川の60代女性は適地調査中の決定に「ひどい。あまりにも早すぎる」と不信感をあらわにする。中岳近くに暮らし、竹林で毎年タケノコを採ってきた。3月の説明会で弾薬庫は攻撃を受けても壊れないとの同省発言が忘れられない。「弾薬庫が大丈夫でも、住民は被害を受ける。穏やかに暮らしたい私たちの声はどうやったら国に届くのか」と嘆いた。 「町民を無視しているようで、進め方に不満が強い」。宮之城地区の70代女性はこれまで薩摩地区以外の町民に一度も説明会が開かれなかったことを疑問視する。整備決定も報道で知ったとし「結論ありきの調査なのだろう」と切り捨てた。
町商工会を中心に2018年発足した「町防衛施設誘致推進協議会」の山崎隆会長代行(56)は「ようやくこの日を迎えられた。疲弊する地域の起爆剤になる」と喜んだ。今後の工事や完成後の施設運営を視野に、「地元企業を優先してもらえるよう、要望活動を続けたい」と話した。上野俊市町長は、同省から弾薬庫整備についての報告を受けたとして、「しっかりと受け止めたい。住民の安全・安心へ適時適切な情報提供をお願いしたい」とコメントした。
南日本新聞 | 鹿児島
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