【ダークヒーローな偉人図鑑】北条義時の生涯から考える〝シン・リーダー〟
映画『ジョーカー』や『マレフィセント』など、もともと〝悪役〟として描かれていたキャラクターを主人公とした作品が数多くヒットしている。時代劇でもまた、ライバルとして描かれる偉人たちがいる。そんな偉人たちにフォーカスを当てた『ダークヒーローな偉人図鑑』。今回のダークヒーローな偉人は、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも話題となった、北条義時。どんな偉人だったのかな・・・？ 今回のダークヒーローな偉人は・・・ 北条義時 北条義時は、平安時代末から鎌倉時代初期にかけての武将です。2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公がこの義時で、俳優の小栗旬さんが熱演していました。よって、義時という名を聞いたことがある人も多いでしょう。義時は、長寛元年（1163）、北条時政の子として生まれました。時政は、伊豆国（現在の静岡県）田方郡北条（伊豆の国市）の小豪族です。義時の母は、伊豆国伊東の豪族・伊東祐親の娘と言われています。 義時には、姉がいました。それが、北条政子です。「鎌倉殿の13人」では、女優の小池栄子さんが政子を時にコミカルに時に威厳たっぷりに演じていましたね。この政子が、平家に敗れ、伊豆国に流罪となっていた源氏の御曹司・源頼朝と結婚します。頼朝と政子の結婚が、北条家の運命を大きく変えることになるのです。 治承4年（1180）、頼朝は平家方に対し、挙兵。北条時政や義時も頼朝方として加勢。同年8月に起こった平家方との石橋山の合戦では敗北し、命の危険に晒されますが、頼朝も北条氏も逃げ切ることができました。そして、千葉の豪族の加勢などを受けて、勢いを盛り返し、頼朝は鎌倉に入るのです。頼朝への貢献が認められたのでしょう、義時は翌年（1181）、頼朝の寝所を警固する「親衛隊」的役割を与えられています。平家追討軍に加わり、九州に赴くこともあった義時でしたが、どちらかと言えば、頼朝の側にいて、頭角を現してきたと思われます。 建久10年（1199）、鎌倉幕府の初代将軍である頼朝は病死。その後継は、息子の源頼家となります。若い頼家を補佐する宿老13人の1人に義時が入っていました。ところが、頼朝死後の幕府は、有力武士同士の抗争が続きます。梶原景時・比企能員・畠山重忠といった有力武士が政争に敗れて、次々に死んでいきました。彼らが消えていったのは、北条氏の策謀とされます。北条時政が策謀を主導したと思われますが、子の義時も手を汚すこともありました（2代将軍の頼家の子で年少の一幡は義時の手勢により殺害されたと言われています）。 元久2年（1205）には、平賀朝雅を将軍に立てようとした時政を義時は伊豆に追放。義時が幕府の実権を握る一歩を踏み出します。建保元年（1213）には、侍所長官の立場にあった有力御家人・和田義盛を挑発し、挙兵に追い込み、ついに滅亡させています（和田合戦）。義時は和田義盛に代わり、侍所別当となり、政所別当と兼務。勢威を増します。 鎌倉幕府の3代将軍・源実朝は、建保7年（1219）１月に甥の公暁に暗殺されますが、それ以降、京都の朝廷と鎌倉幕府の関係は悪化。後鳥羽上皇は、自身の思い通りにならない幕府の実力者・北条義時を打倒しようとするのです。それが、承久3年（1221）の承久の乱です。朝廷の敵軍を関東で迎え撃つのか、それとも西国に出撃して討つのか、幕府の首脳部は迷いますが、最終的には西国に出撃することに決定。義時は長男の北条泰時を大将として、大軍を西国に派遣。朝廷軍を打ち破り、承久の乱に勝利するのでした。乱後、3人の上皇は島流しとなります。 承久の乱から3年が経った元仁元年（1224）6月、義時は病に倒れ、亡くなります。後妻の伊賀の方による毒殺との見解もありますが、脚気（ビタミン欠乏症）が要因で亡くなったと思われます。将軍を補佐し、政務を統括した執権・北条義時。策謀を用いて政敵を葬っていったことが注目されますが、困っている人を助けるという側面もありました。例えば、将軍・実朝に怒られて弱っている武士に助け船を出していたりもするのです。 義時の生涯を見ていくと、リーダーにとって、何が大切かということも分かってきます。
濱田浩一郎
