“重い”日本のゴルフへの思い/石川遼インタビュー ゴルフ未来予想(1)
石川遼は昨年9月に32歳になった。すでに人生の半分に及ぶプロ生活で、ツアーでの活躍もさることながら、幅広い分野で今ある日本のゴルフ界に影響を与えてきたことは疑いようがない。個人の技術だけでなく、ジュニア育成や大会運営、コースセッティング…と多岐にわたる興味関心。2024年新春、ゴルフに見る将来への希望を全3回の単独インタビューで語った。初回はウェアに始まる新たなゴルフのスタイルの提案について。(聞き手・構成/桂川洋一) 【画像】石川遼が考案したキャディバッグ
日本のゴルフは重い?
2023年シーズンの終盤、国内ツアー「ダンロップフェニックス」で石川はキャディバッグに軽量のセルフスタンドモデルを使用した。プロの間で一般的な大型のツアーバッグからの変更には「ゴルフがセルフで気軽にできるみたいな文化を、ゴルフって結構、軽くできるんだみたいな面もアピールできる」という思いがあった。 よくよく考えれば、この言動から浮き彫りになることがある。「自分でそう言うということは、逆説的に、裏を返せば『(ゴルフが)重いと思っている』と思うんですよね(苦笑)。言い方としては“日本での”ゴルフが…というのが正しいのかな。プロゴルフも含めて、日本はやはり独特だなと感じる」。10代の頃から海外でのプレー経験があるからこそ思うことがある。 「各国で特徴があるはずで、これ(現在の姿)は日本のスタイルなんだろうと思います。だから『別のこの国のやり方が正しい』という話ではない。ただ、自分も30代になって、若い人たち、年下の人たちがゴルフをやる姿を見た時に、プロゴルフ界にいる人間、というよりも、ゴルフというスポーツをずっとやってきているひとりとしても、ゴルフのファンとしても、“これがゴルフの当たり前”だと思って違和感を持たずに続けていることが多いんです」
コース入場にジャケットは“マスト”か
石川自身、ジュニア時代には疑問に思うことすらなかった慣例のひとつに、コース入場時のジャケット着用の決まりがある。 「ゴルフウェアの上にジャケットを着てクラブハウスに入る。僕自身、物心がついた頃にはそれをやっていた。小学生の時、優勝者はブレザーを作ってもらえるジュニアの大会があって、僕はそのブレザーしか持っていなかったんです。それからは、ゴルフ場に着て行くのが当たり前になった」 世界を見渡せば、英国の伝統的なクラブなどでは同様の厳格な決まりが設けられている。近代ゴルフが貴族のたしなみとして愛されたことにも由来するが、石川が首をかしげるのは日本の大多数のゴルフ場がその慣習を画一的に踏襲していることだ。 「それもスタイルなんだろうなと思うんですけど、たくさんのゴルフ場で決まりごとの文言が多くある。その文言の全てが、本当に本質的なことを言っているのかどうか…。ジャケット着用の決まりにしても、それを忠実に実行しているゴルフ場もあるけれど、実際にコースに行ってみたらそのルールが“ユルい”ゴルフ場もあるじゃないですか。『一応、書いてある』だけで、その“効力”が(どこのコースにも)必ずしもあるとは言えない」 石川は「全てのゴルフ場でジャケット着用のルールを廃止すべきだ」と訴えたいわけでは決してない。ただし、ジャケットなり、伝統的なゴルフウェア着用の決まりが、ひょっとするとゴルフを始めてみたいと考えるビギナーのハードルになる恐れがないか、ということだ。 「中にはその堅苦しさで『ゴルフが遠い、重い』と思っている人もいる。僕たちプロゴルファーみたいに、それ(日本の伝統的なスタイル)に慣れている人はたくさんいるけれど、やはりこれから先は慣れていない人たちのことを考えるのも大切だと思うんです」