長野市で出土の仏具 奈良~平安時代の「塔鋺形合子」と確認
長野市で奈良時代末から平安時代初期のものとみられる香を入れる仏具、香合(こうごう)のふたが出土し、長野県埋蔵文化財センターは3日、「全国で25個目の存在で、すでにある重文級以上の香合と並び極めて貴重」と明らかにしました。同様の香合は法隆寺や正倉院などにあるだけで、当時の相当の権力者か高位の仏教指導者が現在の長野市にいた可能性が出てきました。同センターは「発掘現場に近い善光寺との関係も含め、解明すべき多くの課題が浮上した」と重視しています。
長野県内では初の出土
出土したのは丸みを帯びた香入れを表す「塔鋺形合子」(とうまりがたごうす)のふたの部分。バイパス工事に伴い長野市柳原の小島・柳原遺跡群で行った発掘調査で昨年10月7日に出土しました。発掘現場は善光寺の東約6キロメートル地点。 塔鋺形合子のふたは高さ6.3センチ、最大胴径8.2センチ、厚み1~2ミリ、重さ102グラム。上にあったと見られる宝珠は欠けています。県や信州大などの検査機関の分析によると素材は銅、鉛、スズ、ヒ素の銅合金。鉛が多く、少量のヒ素を含む点が奈良時代の製品の特徴だとし、理化学的な分析も加えて1200年前のものと判定しました。繊維の一部と見られるものが付着しているため、今後分析します。
ふたは、平安時代前期と見られる竪穴住居跡の土中から土師器(はじき)などほかの土器とともに出土。これまでの分析結果や宮内庁正倉院事務所の見解などからも、出土品は竪穴住居跡があった時期より100年ほどさかのぼる奈良時代末から平安初期のものと同センターは見ています。香を入れる仏具として使われたものですが、同センターによると、もとはインドで同様の大きな器が舎利(骨)を入れる器として使われていました。 塔鋺形合子は法隆寺の献納物として1組(東京国立博物館蔵)、正倉院の南倉に10組、日光男体山山頂遺跡に13点あり、今回の長野市出土のふたは塔鋺形合子関連の存在として全国で25点目、長野県内では初の出土。法隆寺と日光男体山の14件はいずれも重要文化財(正倉院の所蔵は別格扱いで指定なし)で、同センター調査第3課の川崎保課長は「今回の出土は貴重」としています。