「本番モード」の初戦で示された小久保ホークスの基本形 スタメンに名前がなかった巧打者の「準備の仕方」にプロの矜恃を感じた
◆オープン戦・ソフトバンク9―10阪神(19日、ペイペイドーム) 【コラム好球筆打】 試合時間は3時間30分。ソフトバンクにとっては今春のオープン戦で最長となったわけだが、当然かもしれない。三者凡退は両軍合わせて3度だけ。阪神は初回の1度のみで、ホークスは初回と8回の2度しかなかった。 ■「泣ける」ウォーカーが古巣恩師とサムアップ2ショット【写真】 得点経過を見てもスコアボードが動かなかったのは初回だけで、それ以外は毎回のようにどちらかに得点が刻まれた。放った安打も阪神16本、ホークス15本という乱打戦で、勝利を手にしたのは10点を奪った阪神だった。ホークスもオープン戦最多タイの9点を奪ったが、昨季の日本一軍団にあと1点及ばなかった。要するに、投打ともに収穫、または課題が満載だったということだ。 小久保監督はオープン戦最終週の5試合を「本番モード」で戦うと公言していた。その初戦に名を連ねたこの日の先発メンバーが、小久保ホークスの〝基本形〟ということになるのだろう。打順に関しては状態次第で入れ替わることもあるはずだが、基本的にはこのメンバーでプレイボールを迎える。 その「本番モード」初戦に名を連ねることができなかった1人に、中村晃がいた。これまでの小久保監督の発言を振り返るとベンチスタートは周知の事実だったわけだが、2点を追う8回に出番が訪れた。2死走者なしで9番甲斐に代わっての代打だった。 結果は4番手岡留の前に力のない右飛に終わった。ただ、中村晃はしっかりと収穫も得ていた。それは代打を任されるであろうケースでの「準備の仕方」だった。この日は5回の攻撃が終わるとベンチ裏でスイングを開始。試合経過とともに「心の準備」も始め、7回あたりからはスイングルームとグラウンドの明るさの違いも踏まえて「目の準備」も行ったようだ。 「できることは限られてますから。やれることをやるだけです」。打撃の状態は柳田や山川、近藤らに引けを取らないだけに、置かれる立場は悔しいに違いない。それでも任されたところで全てを出し切る。短い言葉の中に、中村晃の矜恃(きょうじ)を感じた。(石田泰隆)
西日本新聞社