「女性ならではの視点で」「男なんだから」は同調圧力!? 圧を感じる“ずるい言葉”、言われたらどうすればいい?
昭和から残る「昔からの価値観」と近年広まった「新しい価値観」、両者の板挟みになり、さらには、現実的に世の中で重視される「市場的な価値観」のプレッシャーも受けることで、つらさを感じる人が増えている今。さまざまな価値観からの圧力により、人を閉じ込めてしまう“ずるい言葉”が世の中には蔓延しています。その言葉に対する考え方や、言い返し方、逃げるための考え方を社会学者・貴戸理恵さんがバッサリ指南! 今回は仕事中に遭遇する言葉について。 【画像】圧を感じる“ずるい言葉”に抵抗するには?
ずるい言葉① 「女性ならではの視点で」 ──悪気なく言っているんだろうな……ということはわかりつつも、言われるとなんだかモヤッとしてしまう言葉です。 貴戸先生:「女性の視点」は必要ですが、ある人を勝手に「女性代表」にするのは違いますね。「私はこう思うけど、他の女性はどうだろう」と、個人の意見が言いにくくなってしまうかもしれません。 「女は黙っていろ」と言われたら反発しやすいけれど、「女性の意見も聞くよ」「だから女性ならではの意見をいっぱい言ってね」というのは、リベラルに見えるぶんやっかいです。 この言葉が出るのは、たいてい場に女性が少ないときです。なので女性を増やすよう要求するのがよいでしょう。「女性といってもさまざまな人がいます。なので私以外の女性も複数入れてください」と伝えてみてください。
ずるい言葉②「男なんだから」 ──「女らしくしろ」と言われることはだいぶ減ってきましたが、「男なんだから」はいまだにOKという空気が一部にはあることも事実です。 貴戸先生:「男だから優遇される」はNGになってきていますが、「男なんだから理不尽なことでも耐えろ」とされることがいまだにあります。「男なんだからしんどくても耐えろ」という言い方は非常に変です。これはヒーロー主義的な意味合いで少年漫画やスポーツ指導の場面に生き残っていますよね。 若い男性には、抵抗してもらいたいですね。「だから何だよ、関係ないだろ」って。 ■貴戸先生が分析する、現代の同調圧力とは? 価値が多様化しているはずなのに、同調圧力を感じて息苦しいのはなぜ? 背景には、3つの異なる価値観のせめぎあいがあります。①「女性は女性らしく」といった伝統的な価値観、②多様性を認めるリベラルな価値観、③競争に勝つことや売れることを重視する市場的な価値観です。これらが隣り合わせに存在し、対立したり結びついたりするなかで、「多様なのに同調を迫られる」という不可思議な状況が生まれています。特に、yoi読者に多い30代は、恋愛や結婚、子育て、仕事などの局面で「こうあるべき」とする規範に晒されやすく、身動きが取りづらくなっています。 社会学者 貴戸理恵 1978年生まれ。関西学院大学社会学部教授。専門は社会学、不登校の「その後」研究。。著書に『10代から知っておきたい あなたを丸めこむ「ずるい言葉」』(WAVE出版)、『「生きづらさ」を聴く――不登校・ひきこもりと当事者研究のエスノグラフィ』(日本評論社)等。 イラスト/ふち 取材・文/東美希 画像デザイン・企画・構成/木村美紀(yoi)