新代表の経営が不可解、住宅会社を倒産に追い込んだ典型的なM&A失敗
2024年2月15日、さいたま地裁越谷支部より破産手続き開始決定を受けたサン勇建設は、典型的なM&A(合併・買収)失敗による倒産といえるケースだ。 【グラフ】倒産件数の推移 同社は1984年(昭59)7月の設立。注文住宅を中心にアパートの建築を数多く手がけ、不動産売買やリフォーム関係にも従事。ドイツ産天然モミの木を使用した自然派住宅を扱うことで他社との差別化を図っていた。こうしたなか2020年の末、創業一族で当時の代表であった社長は、自身の年齢のことも考えてか、会社を売却して経営の第一線から離れることを決断する。M&Aコンサル会社を通じ買い手を探していたところ、登場したのがOという会社。サン勇の新オーナーとなり、代表には新たにO社のY氏が就任した。 このY氏。IT企業出身でドイツ在住の人物であったとされ、業務執行にあたっては、現場に出向くようなことはせず、リモートによる指示が多かったとのこと。これにより、現場の士気は下がり気味であったという。さらに困ったのは、Y氏による経営が不可解で、結果として失敗であったこと。ITによる集客を得意としていたこともあり、金融機関から多額の借り入れを行って広告宣伝活動を積極化させる。ところが、思うような成果は上がらず経費ばかりが先行し、借金が大きく膨らんで業績は急降下。その後Y氏は何と社長を突如辞任。代表就任からわずか1年半後の22年5月のことであった。 結局、今回のM&Aは何だったのか?短期間に会社を引っかき回してつぶしただけ。そうとらえる取引先も多かった。近年、代表の高齢化や後継者難を理由に、M&Aの動きは活発になってきた。ただ、代表として経営に当たる人物が、その適性や手腕を持ち合わせているかどうかの判断は実に難しい。さらに、会社を食い物にしようとする悪意に満ちた勢力も一部で聞かれる。M&Aの増加が予想されるなか、より一層の注意が必要だ。(帝国データバンク情報統括部)