「鉄筋は切断され、地下には水たまりが…」開かずの間となった「東急不動産の高級マンション」で住民らを襲った「悪夢の光景」
「もう見終わったんですか?」
たまりかねた住民が管理組合に相談。そこで初めて事態を把握した組合側が東急不動産に再調査を依頼した。 「東急不動産の担当者に加え、施工担当だった東急建設の職員も現場に来ました。そこで地下ピットの検査を行うことになった。組合関係者も一緒に入ろうとマンション内で待機していたんですが、東急側は『安全かどうか確認が取れていない』と立ち入りを拒否。組合関係者も従うしかなかった。 マンションの建築面識だけでも900平方メートル以上ありますから、地下全体をくまなく調べるとなると少なくとも30分から1時間ほどかかるはず。でも職員たちが5分も経たずに上がってきた。驚いた組合関係者が『もう見終わったんですか?』と尋ねると『はい』と答える。『どこまで見たのか』との問いには曖昧な返事をするだけでした。つまり地下ピットの手前までしか確認していなかったんです」(前出・住民) しかし、ここでも東急の担当者は驚きの検査結果を告げる。 「担当者は『確認すると地下には断熱材が張ってあったので大丈夫です』と説明していました。組合関係者も『断熱材とカビの発生と何の関係があるんですか』と言葉を返したが、とにかく『断熱材があるから大丈夫です』の一点張り。そのやり取りを続けていると、最終的に東急サイドから『でしたら組合で調べてください。問題があればこちらで対応します』との返事がありました」(前出・住民) 早速、組合は予算を編成し、民間の調査会社に依頼。そして2019年3月、外部の調査員ともに組合の担当者らが問題となるマンションの地下ピットへと足を踏み入れた。だが、そこに広がっていたのは住民らの想像を超える光景だった。実際に調査に同行した住民の一人が語る。
地下に広がっていた「光景」
「設備の配管は整理されておらず、入り乱れていました。ガス管は紐でくくられているだけで、宙ぶらりんの状態でした。電気や水道管も同様です。通常、配管はフックで固定されるものですが、地下にはフック自体が取りつけられていなかった。当然、垂れ下がった状態の管はそれだけ水漏れやガス漏れが起きるリスクは生まれます。 くわえて建物の基礎を繋げるはずの地中梁には強引に配管を通そうと複数の穴が開けられていて、なかにある縦横の鉄筋がくりぬかれるように切断されていた。建物は鉄筋が繋がっていることで強度を保つ作りになっていますから、切れていればそれだけ建物の基礎が弱くなる。地震が来れば崩壊する可能性が高くなります」 さらに調査を進める住民たち。そこでようやくマンション1階を侵食するカビの原因が判明する。 「地下ピット内にはいくつもの地下水による水たまりができていて、それがカビを発生させる要因となっていました。調べてみると施工ミスで屋上に降った雨が地下ピットまで流れ込んでいました。元々、地下ピットは防水シートも被せていないので、水を入れる仕様にはなっていません。地下に溜まった雨水を排水しきれず、結果として1階の家はいつもカビていたんです」(前出・調査に同行した住民) まさに施工不良の魔窟と化したフロレスタの地下ピット。目を覆うような景色に言葉を失うばかりの住民たちだったが、この惨状はこれから起こる悪夢の序章に過ぎなかった。 つづく中編記事『「耐震、全然ダメです」そして誰もいなくなった…世田谷・違法高級マンションで住民らを襲った「悲劇の数々」』では二転三転する東急グループの対応、耐震の要とされるスリット不足の発覚、そしてフロレスタが違法建築物へ姿を変えた一部始終を関係者の証言を交えてお伝えする。 ※「現代ビジネス」「週刊現代」では、みなさまからの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://tips.weeklygendai.com/
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