【山口】狙うはグローバルニッチトップ 「カニカマ製造装置」初号機開発した老舗メーカーの“金平糖経営”とは
カマボコで培ったノウハウを生かし、1979年にカニカマ製造装置の初号機を開発したヤナギヤ(山口県宇部市)。世界のカニカマブームの波に乗り、グローバルニッチトップ企業として成長していきました。その技術力はカニカマだけでなく、あらゆる分野で生かされています。 柳屋芳雄社長はカニカマを軸にして、取り扱い分野を増やす戦略を「金平糖(こんぺいとう)経営」と呼んでいます。その“突起”を伸ばす秘訣が、顧客の「困った」を解決することです。
【柳屋芳雄(やなぎや・よしお)】 1950年山口県生まれ、日本大学経済学部卒業後、兵庫県のかまぼこメーカーに就職。 1975年に24歳の若さでヤナギヤの3代目社長に就任。 1979年にカニカマ製造機を開発。 水産練り製品だけでなく、あらゆる食品や日用品、医薬品向けに装置の販路を広げる。
技術で「伝統食」を支える
「きりたんぽの装置メーカーが廃業して困っています。御社で何とか作れませんか?」 2022年、ヤナギヤの東北地方の担当者がこんな相談を持ち掛けられました。秋田県の伝統食であるきりたんぽは、市場縮小などによって製造装置のメーカーが少なくなってしまったとのこと。装置が古くなっても買い替えられず、メンテナンスにも支障をきたすようになっていました。 「東北の担当者にきりたんぽの装置は何台くらい売れるのかと聞くと、10台という答えでした。最初は1年で10台かと思いましたが、10年で10台です。うーんと思いましたが、業界が困っているなら作ろうと判断しました。伝統食の業界を単独で支えるのは荷が重いですが、できる限りのことはやりましょうって感じですね」
炊き立てご飯をすり潰し、串に巻き付けて成型する。ガスや赤外線で焼き、最後に串を抜いて完成。ここまですべて自動でできる「きりたんぽ製造装置」を開発しました。発注元のきりたんぽメーカーからは「歩留まりがよく、きりたんぽの成型も良好だ」と喜ばれたといいます。 カニカマの製造装置で世界を席巻したヤナギヤ。その技術が活躍する場はカニカマだけではありません。同じ練り物食品であるきりたんぽのほか、私たちの日常の食を支える陰の主役と言える存在になっています。