年間60万頭も駆除されている野生鹿を使ったジビエレザー「Portierra」
ー駆除された鹿が製品としての革になるまでの工程を教えてください。 猟師さんや野生動物の食肉処理施設に僕たちが出向いて、そこで生皮を購入させてもらいます。業者さんにも依りますが、生皮は塩漬けにされているか、大型の冷凍庫で保存されています。
最初に、塩処理によって生皮に含まれている水分や油脂分を浸透圧で抜いていきます。防腐加工の目的もありますが、次の工程で薬品の入りを良くする目的でもあります。 その後、ドラムで石灰を使って脱毛をし、裏の肉を落とすフレッシングを行っていきます。再度、石灰脱毛をして、浸酸という皮を酸性にする作業をはさみ、なめしをします。 最後に水絞りをして、シェービングで皮の厚みを整えて、再なめし、染色という流れになります。
ーどういった点で環境への配慮を意識していますか。 「Portierra」の大きな特徴として、リン酸系のなめし剤を使っています。弊社の商品を土のなかに埋めれば、完全に分解されて自然に還すことができるほど、安全な基剤となります。 最も多く使われている鞣し剤はクロムといって、革にとっては万能な薬剤となります。安価で強く綺麗になめしができるという特徴があります。ですが、低温で焼却されると六価クロムという発がん性物質に変性する可能性があります。「Portierra」ではクロムやその他環境負荷になりうる薬剤を使用しない事もコンセプトとしています。 また薬剤以外にも、増えすぎて駆除されてしまった野生獣を扱っている点でエシカルであり、サステナブルだと考えています。鹿は日本の野山が育んだ大切な命であり、そのお肉を頂き更に皮も頂く。完全な地産地消が可能で、大半を輸入に頼る牛皮とは性格が大きく異なります。
ー野生の鹿ということで、革にはどのような特徴がありますか。 鹿革は日本で古くから使われてきた歴史があります。牛と比べて鹿の方が繊維が細いため、空気を通しやすく吸水速乾性があります。また油分との親和性もよく、柔らかい質感を維持できます。メンテナンスフリーで長く使えるのが特徴ですね。