NHK、かんぽ報道巡る議事録訴訟で和解 HPで公開へ 東京高裁
かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、NHK経営委員会が会長を厳重注意した際の議事録や録音データの開示の是非が争われた訴訟は17日、東京高裁で和解が成立した。番組編集に経営委が介入した疑惑に関わる議事録を、経営委が自ら一般公開するとの内容が柱。議事録は経営委のホームページに18日、アップされるという。 【図で解説】かんぽ生命の不適切契約、どうやった? NHKは2018年4月、かんぽ不正を追及する番組「クローズアップ現代+(プラス)」を放送。日本郵政グループの抗議を受けたことから、森下俊三前経営委員長らが主導して、上田良一会長(当時)を厳重注意したとされる。 経営委は公共放送の担い手であるNHK執行部を監督する立場にあるが、個別の番組編集へ介入することは禁じられている。市民グループが介入の有無の判断材料となる、厳重注意時の議事録や録音データを求めて提訴していた。 1審・東京地裁判決(24年2月)は、NHK側が削除したと主張していた録音データの存在を認め、開示を命じた。さらに、開示を怠ったとしてNHKと森下前委員長に計228万円の支払いを命じ、NHK側が控訴していた。 東京高裁で成立した和解の条項によると、経営委が議事録を公表するほか、森下前委員長が市民グループ側に解決金計98万円を支払う▽録音データは消去されて、存在しないとNHK側が説明していることを確認する――ことも盛り込まれた。【菅野蘭】 ◇「放送法違反行為があったことは明らか」 今回の和解成立を踏まえ、山田健太・専修大教授(言論法)は「経営委で森下氏らが主導する形で会長を厳重注意して番組への干渉を行い、放送法違反に当たる行為があったことは明らか」とした上で、NHKが今回、議事録を一般公開することで「経営委での問題発言を認めることになり、個別番組への干渉があったかどうかを改めてきちんと議論できる土俵が整う」と評価する。 また、公共放送であるNHKが独自の情報公開制度を運用してきた中で、経営委が情報公開請求に対して事実上の議事録の非開示を貫いた時期があったことについて「制度が十分に機能していないことが、今回の問題と裁判を通じて明らかになった」とし、公共放送としての経営の透明性が十分に保たれていない現状を問題視する。「NHKが議事録をどう定義し、きちんと公開するかどうか、議事録の(要約で事実上の)改ざんをしてまで全面開示を拒否した問題について誤りを認め、今後同様のことをしないと明らかにするかがポイントになる。これを機にNHKが改めて説明する責任がある」と強調した。【平本絢子】