私大の3割、定員削減を実施・検討中 国のペナルティー避ける目的も
少子化で学生の確保が難しくなるなか、私立大の3割が学部の定員を減らすことを決定または検討中であることが、朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」でわかった。小規模大学が大半を占めた。国が強化する定員割れに対するペナルティーを避けるための対応も目立つ。 【画像】進む私大の撤退・縮小、国の「北風と太陽」政策で 共同調査では、学部の定員を減らす考えの私大は回答した474大学中44大学と、1割弱にのぼった。さらに2割(96大学)が「実施するか検討中」と答えた。 定員を減らす考えの私大で多かったのは、入学定員が「1千人未満」の小規模大学だった。44大学の9割近い38大学を占めた。京都府と大阪府を除く近畿地方と四国・九州地方で目立った。 今春の入学者が定員割れとなった私立大は、過去最高の59%に達した。収入の柱である授業料などの学生納付金が減れば経営が悪化し、学生への教育にも支障が出る恐れが強まる。このため文部科学省は近年、定員割れの大学に対するペナルティーを強めている。 学生数などに応じて国から配分される私立大学等経常費補助金(私学助成)が、ペナルティーの代表例だ。全学年の定員に対する学生数の割合(収容定員充足率)が、90%を切ると減額する。充足率が低いほど大きく減額し、50%以下になればゼロに。私大は平均で1割程度の収入を失うことになる。 ■私大団体批判「若者の地域流出助長する」 さらに今年度、強力なペナルティーが追加された。主に低所得世帯の学生向けの修学支援新制度の対象となる大学の要件に、収容定員充足率が持ち込まれたのだ。この制度は、給付型奨学金を支給し、授業料や入学金を減免するもの。充足率が直近3年連続で8割未満の場合、原則として新制度が対象とする大学から除外することにした。就職率などが9割を超えれば除外が猶予される仕組みがあるが、充足率が5割未満の学部が一つでもあると、この猶予も受けられない。 対象から外された大学は、さらに入学者が減る可能性が高い。このため、充足率が基準を超えるように、あえて定員を減らす大学もある。 小規模大が多く加盟する日本私立大学協会は、9月の中央教育審議会の特別部会で、修学支援新制度のペナルティーを廃止するよう求めた。「支援対象の低所得層の学生が、学びたい大学で学べなくなる。地方から大学進学の機会が失われ、若者の地域流出を助長させかねない」と訴えた。(増谷文生、久永隆一)
朝日新聞社