〈大山のぶ代さん逝去〉「ドラえもんの体型にだんだん近づいていく」語っていた”夫”と”ドラえもん愛”
「“ドラえもんやってるから仕方ないでしょ”っていってるの」
長年のパートナーであった砂川さんとの仲むつまじい様子は、過去のインタビューからも読み取れる。ドラえもん役を担当していた際、彼女が“ドラえもん体型”に近づいたことについて、次のようなやりとりがあったそうだ。 「よくアテレコというけど、アニメの場合は“見てレコ”なのね。無音のフィルムを見て声を合わせるんです。私マイクから離れて声を出すので、すごくお腹が空くの。だから口に出せないほど太っちゃって。ドラえもんの体型にだんだん近づいていくみたい。主人(砂川啓介)に“あと2キロ太ったら離婚だ”と宣言されてるんですよ」(集英社『週刊明星』1980年1月27日号) 「家でも脚を開いておなかを出し、口を横に広げて喋ってるらしいのね。でも、“ドラえもんやってるから仕方ないでしょ”っていってるの」(集英社『週刊明星』1980年1月27日号) また、1979年ごろにはテレビ朝日の看板番組として高視聴率を記録していた「ドラえもん」だが、その裏には大山さんのたゆまぬ努力があったそうだ。 彼女は当時の様子について「掛け持ちはやらない。好きなタバコも日に20本から10本に、しかもフィルターつけて。刺激のある食べ物は一切食べない」とその禁欲生活を語り、現場スタッフも「ふつう声優サンの場合、リハーサルの当日までセリフに目を通すことはない。だけど、彼女はその段階で、すべてのセリフを叩き込んでいる」とプロフェッショナルとしての姿勢を当時から評価していたのだ。(集英社『週刊明星』1979年10月21日号)
声優・俳優としてだけでなく、料理家としても活躍
さらに、大山さんは料理研究家としての一面もあり、テレビ番組「大山のぶ代の料理朝一番」(TBS)でその腕前を発揮するだけでなく、『大山のぶ代のなんと2分間クッキング』(主婦の友社)などの料理本も多く手がけていた。 そんな“ベストセラー作家”でもあった大山さんは、『大山のぶ代のおもしろ酒肴』(主婦の友社)が刊行された際に、その肩書きについて次のように語っている。 -------------------------------------------------------------------------- ■『おもしろ酒肴』が売れてるそうですね? お恥ずかしい。私、出版社の人に16万部出たと聞き、『じゃあもうすぐベストセラーね』といったら『今ベストセラーなんです』といわれて。私、なんかいけないことしたみたいで、すごく落ち込んじゃったんです。 ■胸を張るべきでしょう? 物書きでないのにこんなに売れちゃって…。本屋さんの前を通る時もすごく恥ずかしく、下を向いてコソコソ足早に通るの。 ■ご主人(砂川啓介さん・43)はどんな反応ですか? 今は、役者だから役者しかやらないという時代じゃないよ、って。私、落ち込むと食欲を失って、料理を作る意欲を失うものだから、向こうも必死だったみたいですよ。 (出典:集英社『週刊明星』1981年4月30日号) -------------------------------------------------------------------------- 「ドラえもん」降板後も、テレビ・ラジオをメインに、講演やタレント活動、ナレーションなど、さまざまな舞台で活躍した大山さんだが、2012年にアルツハイマー型認知症との診断を受けた。 砂川さんが2015年にそれを発表後、公の場に姿を現すことはなくなったが、メッセージ収録などの仕事は続けていたという。その後、2016年に在宅介護から老人ホームへと移り、同年で芸能活動を事実上終えた。 突然の訃報に、日本のみならず、世界中から追悼のコメントが発信されている。ドラえもんの声を通して、多くの人々に夢と希望を与えてくれた大山さん。 彼女の声は、いつまでも私たちの心に残り続けるだろう。大山さんのご冥福をお祈りしたい。 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班