圧倒的優位の松浦悠士はなぜ敗れた? 別線の波状攻撃で切り崩された中四国勢/高松競輪G3・決勝回顧
現役時代はKEIRINグランプリを3度制覇、トップ選手として名を馳せ、現在は評論家として活躍する競輪界のレジェンド・山田裕仁さんが高松競輪場で開催された「玉藻杯争覇戦」を振り返ります。
2024年2月20日(火)高松12R 開設73周年記念 玉藻杯争覇戦(GIII・最終日)S級決勝
※左から車番、選手名、期別、府県、年齢 ①松浦悠士(98期=広島・33歳) ②佐藤慎太郎(78期=福島・47歳) ③井上昌己(86期=長崎・44歳) ④菊池岳仁(117期=長野・23歳) ⑤町田太我(117期=広島・23歳) ⑥東龍之介(96期=神奈川・34歳) ⑦香川雄介(76期=香川・49歳) ⑧福島武士(96期=香川・38歳) ⑨浅井康太(90期=三重・39歳) 【初手・並び】 ② ←④⑥(混成)⑨③(混成)⑤①⑦⑧(中四国) 【結果】 1着 ⑨浅井康太 2着 ①松浦悠士 3着 ③井上昌己
決勝は松浦悠士が完全Vに王手、浅井康太と井上昌己が「GP王者ライン」結成
全国的に汗ばむほどの暖かさとなった、2月20日。香川県の高松競輪場では、玉藻杯争覇戦(GIII)の決勝戦が行われています。S級S班からは、佐藤慎太郎選手(78期=福島・47歳)と松浦悠士選手(98期=広島・33歳)がエントリー。山口拳矢選手(117期=岐阜・28歳)も出場を予定していましたが、残念ながら病気欠場となりました。おそらく全日本選抜競輪(GI)も、かなり無理して走っていたのでしょう。 S級S班の出場は2名だけとなりましたが、浅井康太選手(90期=三重・39歳)や北津留翼選手(90期=福岡・38歳)、犬伏湧也選手(119期=徳島・28歳)なども出場と、層の厚さはなかなかのもの。初日特選を制したのは松浦選手で、主導権を奪った犬伏選手の3番手から、最後の直線では中を割って力強く伸び、差し切りました。松浦選手は、調子を上げてきている印象を受けましたね。 松浦選手は二次予選と準決勝でも1着をもぎ取り、完全優勝に王手をかけて決勝戦に進出。期待された四国勢の犬伏選手は、準決勝で果敢な突っ張り先行からよく粘るも、道中で巧い立ち回りをみせた浅井選手に捲りきられて、5着に敗退しています。浅井選手は、まだまだタテ脚でも勝負できる…ということを見せつけるようなレース内容。浅井選手と同じく、佐藤選手の立ち回りもさすがでしたね。 決勝戦に4名が勝ち上がった中四国勢は、ひとつのラインで結束して勝負。その先頭を任されたのは町田太我選手(117期=広島・23歳)で、1着こそ取れていないものの、デキのよさが目立っていました。その番手を回るのが松浦選手で、3番手に香川雄介選手(76期=香川・49歳)。そして4番手を固めるのが福島武士選手(96期=香川・38歳)と、ラインの3番手と4番手に地元勢が並ぶカタチです。 浅井選手は、過去に連係実績もある井上昌己選手(86期=長崎・44歳)と「グランプリ王者ライン」を結成。混成ラインとはいえ、自分の後ろに井上選手がついてくれたことは、浅井選手も心強かったことでしょう。そして、菊池岳仁選手(117期=長野・23歳)の後ろは、佐藤選手と東龍之介選手(96期=神奈川・34歳)の「番手競り」に。近年でこそ珍しくなりましたが、一昔前は普通にあったことなんですよね。 自力で勝るうえに“数の利”まである中四国勢の好きにさせると、他のラインは手も足も出ずに終わってしまう可能性がある一戦。中四国勢が嫌がるような展開に、いかに持ち込むかが問われる決勝戦といえるでしょう。注目は、町田選手と同期で年齢まで同じである、菊池選手の動き。レース前にも「町田君には負けたくない」とコメントしていただけに、どのような走りで勝負をかけてくるのか楽しみです。