小型旅客船の主な安全対策のポイント

北海道・知床の観光船沈没事故から約2年5カ月。各地の旅客船の運航業者はハードとソフトの両面から再発防止に向けた対策を進めている。 「知床の事故以降、天候が悪くなると、お客さまから『怖い』という声が寄せられるようになった」。静岡県西伊豆町で遊覧船を運航する「堂ケ島マリン」の安全統括管理者、磯谷利治さん（55）はこう話す。 風速12メートル以上などの条件で運航を中止する規定を設けているが、あくまで目安。安全最優先を心がけているという。 所有船舶は7隻。日本小型船舶検査機構（JCI）の検査はより厳格になり、水密状況など厳しくチェックされるように。事故時に位置情報を発信する装置の取り付けも義務化された。「価格は1つ30万～40万円。補助金は出たが、全隻に付けるのは大変だった」 電波が強力な国際無線を導入した東北地方沿海の観光船長の男性（49）はソフト面の変化も語る。月に数回、必要機器の運用などについて行政側との会議に出席するようになった。「機器を付ければ終わりではない。安全対策についてはまだ100％の答えは出ていない」と語った。 運航業者の多くが地域密着の小規模企業だ。対策の厳格化は経営を直撃する。浜名湖（浜松市）で遊覧船を運航する「清音」は、海洋クルーズが人気だったが、コスト削減のため、燃費を抑えられる波の穏やかな湖内ルートに変更する方針だ。 新村年高社長（47）は「一斉に厳しくされると返って安全の担保がおろそかになる。国はもっと事業者の声を聞いてほしい」と訴えた。（宇都木渉、山本玲、塚脇亮太）