「青春18きっぷ」はオワコンなのか?複数人使用、期間をあけての乗車ができない“サービス改悪”で高まる不満
■ 時代と共に普及した「フルムーンパス」「ナイスミディパス」など 18きっぷは学生が長期休暇に入る時期の減収分を補填することを目的として企画されたと言われる。そうした目的を含みながらも、年齢を問わず学生以外でも18きっぷを購入・利用できることから今日に至るまで幅広い層に使用されてきた。 これまで18きっぷは普通列車のみ乗車可能な全線フリーパスが5回分つづられていた。当初は5回分を1枚ずつ切り離して5人で利用することも可能で、5人が別々のルートで旅をすることもできた。 1996年から切り離して使用することはできなくなったが、それでも同一ルートで移動するなら5人で使用できたので、友達同士や家族旅行で使用されるケースも目立った。 18きっぷのほかにも、1981年には2人の年齢合計が88歳を超える夫婦を対象にした「フルムーン夫婦グリーンパス」を発売。同パスは、東海道新幹線「のぞみ」や山陽新幹線「みずほ」は乗車できないが、そのほかの特急・寝台車に自由に乗車でき、しかもグリーン車も利用できる。 発売当時の国鉄にとって、中高年層の旅行需要を拡大させることは重要課題になっていた。フルムーン夫婦グリーンパスはその目的のために考案された特別企画乗車券だった。 また、同年には訪日外国人観光客を対象にした「ジャパンレールパス」も発売。18きっぷが発売された翌年には中高年の女性をターゲットにした「ナイスミディパス」も発売された。 このように18きっぷをはじめとする特別企画乗車券は時代と共に普及していくが、それでも国鉄の赤字体質は改善できずに分割民営化議論は続けられていった。
■ 第三セクター鉄道の登場で使いづらくなった18きっぷ 長らく不動の人気を誇っていた18きっぷだったが、JRの赤字によって切り離される第三セクター(地方公共団体が民間企業と共同出資して設立された事業体)の鉄道が出てきたことで次第に使いづらくなっていく。 例えば、NHK連続ドラマ小説「あまちゃん」の舞台にもなった三陸鉄道は、分割民営化を待たずに国鉄から切り離されて第三セクターの鉄道となったため、JR線ではないことを理由に18きっぷでは乗車できなくなった。 一方で特例が設けられていた鉄道もある。前述した三陸鉄道は18きっぷを提示すると「三鉄1日とく割フリーパス」という企画乗車券を割引価格で購入できた。同じく国鉄から宮福線と宮津線を継承した第三セクターの北近畿タンゴ鉄道(現・京都丹後鉄道)も、青春18きっぷを提示することで1日乗車券を500円の追加料金で購入できた。 数少ない18きっぷ利用者御用達の列車といえば、2009年に定期運行が終了し、2020年までは臨時運転されていた「ムーンライトながら」だろう。 18きっぷの1回分は、日付が変わって最初に停車する駅までとしてカウントされる。そのため東京駅─大垣駅間を夜行の普通列車として走るムーンライトに乗車する際には、東京駅―小田原駅間までは通常きっぷを購入し、小田原駅から大垣駅までの移動で18きっぷを使って効率的に移動するのが鉄道ファンや旅行ファンの間では常識になっていた。 このように経済的にお得だった18きっぷだが、1997年には高崎駅―長野駅間に長野行新幹線(後の北陸新幹線)が開業。信越本線の一部区間は第三セクターのしなの鉄道へと移管され、JR線ではなくなったことで同区間の18きっぷでの乗車ができなくなった。 同じように、東北新幹線が2002年に盛岡駅から八戸駅まで延伸開業を果たすと、同区間の東北本線が第三セクターのIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道へ、2004年には九州新幹線の新八代駅―鹿児島中央駅間が部分開業したことに伴って鹿児島本線の一部区間が肥薩おれんじ鉄道へ、といった具合に新幹線の延伸開業とともに18きっぷの使用できる範囲は狭まっていく。