「クジラ語」解読に光、「音声のイロハ」がついに見つかる、ヒトのように話せる可能性
「新しい世界が開けようとしています」
なかでも最も興味深いのは、マッコウクジラのコミュニケーションにも人間の言語のような「二重分節性」があるかもしれない点だ。これは、一つひとつの音に意味がなくても、組み合わせることによって複雑な概念を伝えられることを意味する。 たとえば、英語の「バ」という音にも「ナ」という音にもそれ自体に意味はないが、この2つの音を組み合わせて、「バナナ」という単語を作ることができる。さらに、こうしてできた単語を並べて、文を作ることもできる、という二重の構造だ。 シャーマ氏は、コーダやその変化形を「文」とまでは呼ばなくても、その音が表す意味が1つだけではないことを示す手がかりはあるとしている。 「動物のコミュニケーションシステムと人間の言語との比較など、人間以外と人間の行動を比較する際にはいつでも注意が必要です」と、オーストラリアにあるクイーンズランド大学クジラ目生態学グループの博士研究員であるレオニー・ホイセル氏は、Eメールで指摘する。 全体として、マッコウクジラのコミュニケーションは「ほぼ無限の可能性を秘めているように見えます」と、ゲロー氏は言う。 「私たちは、クジラ同士の会話のやり取りをかなり細かいところまで分析しています。ある意味非常に楽しく、魅力的な、新しい世界が開けようとしています」
文=Jason Bittel/訳=荒井ハンナ