<センバツ・この選手に注目>/3 高尾響投手(広陵・1年) 入学2カ月、エース誕生
昨年、還暦を迎えた中井哲之監督が笑い声を上げながらその印象を語る。「今時、こんなのがおるんかと。ふてぶてしい。度胸満点。(雰囲気が)昭和じゃ、昭和」 福岡県粕屋町出身で、中学時代は飯塚ボーイズ(福岡)でプレーした。昨春の入学後まもなく、練習試合のマウンドに立った。毎年恒例のいわゆる「肝試し」。上級生相手に普通は緊張から投球がままならないという。だが、高尾に限っては様子が違った。打者と真っ向から勝負する負けん気の強さがあった。 そのまま実戦で結果を残し、春の中国大会で背番号「1」を渡された。広陵を率いて30年以上で、春優勝2回、夏準優勝2回の中井監督も「初めて」という入学後約2カ月でのエースの誕生だった。一方、本人は「背番号で野球をやるわけではないので」と平然としていたというから憎い。 最速145キロの直球が低めに伸びてくるのが特徴。昨秋もエースとして躍動したが、広島大会後に右足の疲労骨折が判明した。それにもかかわらず、続く中国大会も「投げます」と言って聞かなかった。最終的には周囲の説得に納得し、1試合だけの登板にとどめたが、明治神宮大会ですぐに復帰。新たに習得したスプリットを武器に3試合計12回を投げ、失点1。16三振を奪う圧倒的な投球を披露した。 身長172センチと大柄ではない。比較対象として名前が挙がるのがOBの野村祐輔投手(広島)だ。ただし、中井監督は「高校時代を比べれば野村よりこっちが上」と言う。 明治神宮大会ではけがの影響もあり、背番号は「11」だった。「気にしない」と言っていた背番号だが、「エースとして投げたい気持ちはあります」。鼻っ柱の強さにどこかノスタルジーを感じさせる。【生野貴紀】=つづく