軽自動車の王者「N-BOX」に何が起きた? 販売ランキングでついに「首位陥落」、その納得理由とは
N-BOX首位陥落の背景
一方、首位から陥落したホンダN-BOXが苦戦に陥った要因はどこにあるのか。 ホンダ・N-BOXは2023年10月に2017年以来、2度目となるフルモデルチェンジを実施した。現行モデルが3代目となるが、モデルチェンジ直後にダイハツ工業による認証不正が発覚し、ホンダにとって追い風となると見られていたが、2024年に入ってもN-BOXの販売はそれほど伸びていなかった。 N-BOXを一言でいうならば、 「質感を徹底的に追求した軽自動車」 といえるだろう。ホンダが普通自動車の開発で培った技術を生かし、従来の軽自動車を超えるクオリティーを目指した。それが広く受け入れられ、高めの価格帯設定でもヒットにつながった。 N-BOXの購入層はデザインを重視する傾向があるようだが、今回のカスタムは先代よりもシンプルな印象で落ち着いたデザインとなったことで、一部の購入層が他車へ流れたのかもしれない。 また、標準モデルは、キープコンセプトで旧モデルとさほど変わらず、新モデルと区別が付かないともいわれているほどだ。モデルチェンジによって、旧モデルとの差別化を求めていたユーザーにとっては期待外れとなり、買い替え需要を十分に喚起できなかったことも、販売が伸び悩んでいる要因に挙げられる。 ホンダは、日産との戦略的パートナーシップ検討を開始する覚書締結を2024年3月に発表している。詳細はまだベールに包まれたままだが、今後両社が手掛ける電気自動車(EV)や軽自動車などの共同開発が進められる可能性が取りざたされている。ホンダがその一環として、軽自動車試乗での巻き返しを図っていくのか注目していきたい。
日常使いに最適な軽自動車の進化
これまでに述べてきたホンダとスズキの2車種に加えて、三菱・デリカミニや、生産が再開されたダイハツ・タントなどは、軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるカテゴリーに属する。今や、軽自動車市場の大半を占める主戦場となっており、各社によるモデルチェンジが相次いだ2023年は当たり年といわれた。 全高1700mm超で、リアにスライドドアを備えるというスタイルが定着し、モデルチェンジごとに機能性や走りが進化を遂げている。一般に軽自動車はセカンドカーのイメージが強いが、“1台目”として購入する層が 「約4割」 を占めており、日常使いとして頼れる各種機能や安全性が、これまで以上に求められる。 日産・ルークスやダイハツ・タントのモデルチェンジは2025年以降と予想されており、年内は、ホンダ・N-BOXとスズキ・スペーシアの激しいデッドヒートが繰り広げられることになるだろう。 今後はEVへのシフトも想定されるなか、各社による開発競争で切磋琢磨(せっさたくま)し合うことで、われわれ消費者にとっては、より魅力あるモデルが提供される日を心待ちにしていきたい。
小城建三(自動車アナリスト)