「俺がここにいるぞ!」久保建英が示した覚悟…ソシエダの窮地から逃げず、責任を果たすゴール
今季2ゴール目
レアル・ソシエダは、ラ・リーガ第8節でバレンシアに3-0と勝利した。この試合に先発した久保建英は、先制点となる今季2ゴール目をマーク。深刻な不振に陥っていたチームの責任を負う覚悟を、地元出身記者が綴る。 【動画】久保建英、覚悟を示す今季2ゴール目 文=ナシャリ・アルトゥナ(Naxari Altuna)/バスク出身ジャーナリスト 翻訳=江間慎一郎 企画=河又シュート(GOAL編集部)、江間慎一郎
恵みの雨
私たちが本拠地アノエタで最後に勝利を味わったのは、5月16日のバレンシア戦だった。それから長い渇きの日々が始まったが、夏が過ぎて秋が始まり、ようやく恵みの雨が降ってくれた(……といっても、実際のサン・セバスティアンは1年ずっと雨が降っているが)。勝利した相手は、またもバレンシア。そして勝利への道を切り拓いたのは、第2節エスパニョール戦でも勝利に導く決勝ゴールを決めてくれた、久保建英である。 タケ、君には何度でもありがとうと言わなければならない。それはゴールだけでなく、気持ちの面でも、だ。私たちにとって君は「傭兵」にはなり得ないのだ。
「荷車を引く」
ラ・レアルで3シーズン目を過ごしている久保。ここまでの2シーズンは成功と言っても差し支えない内容と結果を収めてきたが、今季は初っ端から試練を迎えることになった。ロビン・ル・ノルマンがアトレティコ・デ・マドリー、ミケル・メリーノがアーセナルに移籍し、負傷者も続出……。再構築を余儀なくされたチームは結果が出ず、失望やフラストレーションばかり溜まる状況だった。 だがしかし、それでも久保は逃げなかった。 良い時期に良い顔をするのは簡単だ。本当に偉大なフットボーラーであるかどうかは、難しい時期にこそ分かる。久保はまぎれもなく後者だった。いや、私たちは彼の意思の強さを知っていたが、その強さは思っていた以上だったのだ。スコアレスドローで終わった前節バジャドリー戦の後、この日本人は誰も応じることを望まなかったテレビのインタビューで、感情を込めながら次のように話したのである。 「本当、うんざりしてます。審判が終了のホイッスルを吹いたとき、僕は動くことができませんでした。今日は絶対に勝たないといけなかったので……みんなうんざりしています」 「でも、流れは変わります。変わりますよ。次の試合で絶対に変わるとは言えませんが、そうなることを願っています。僕はこのチームが上向いていくことを確信していますし、自分が荷車を引いていきたいと思います」 この「荷車を引く(tirar del carro)」は「大部分の責任や重荷を引き受ける」、すなわち「チームを引っ張る」という意味だ。久保は窮地のチームを率先して救う気概を示したのである。 「荷車を引く」と言い切るのは、決して簡単ではない。例えばレアル・マドリー時代のマルコ・アセンシオだ。今の久保と同じくらいの年齢だった彼は、マドリーの窮地が騒がれた際に「荷車を引くのは僕じゃない。ここには僕より長くチームに在籍している、地位が上の人たちがいるだろう。荷車を引かなくてはいけないのは彼らだ」と語り、マドリーの将来を担うための野心や覚悟、責任感が欠如していると非難された。だが久保は違った。彼は私たちに向かって「俺がここにいるぞ!」と叫んだのだった。