【三者三様の人生模様から読み解く中華人民共和国の今】富裕女性のツアー、失業青年、北米移住を目指す起業家
中国人起業家の人生設計と世界観と政治感覚
L氏は現在スリランカで単身生活。10歳の長男はシンガポールの親戚の家に預けている。将来は米国の一流大学に留学させる計画。次男は現在ウルムチで夫人と暮らしているが将来の進学に有利なシンガポールかどこかに移す予定。 いずれ全ての事業が軌道に乗れば、米国かカナダあたりに家を買って一家で移住するという。つまり中国に戻る考えはない。L氏の得た情報では2023年にメキシコ国境から米国に違法越境した中国人は5万人に達した。以前は富裕層・中間層が合法的に米国へ移住できたが、米国の審査が厳しくなり中国経済悪化で金のない若者がメキシコ経由で米国に流入していると。 ジャック・マーへの対応に見られるように習近平政権は経済を犠牲にしてでも独裁体制確立を優先しており毛沢東時代への回帰を夢想している。中国人の97%を占めるのは漢民族。チベット、ウイグル、モンゴルに対する弾圧と同化政策に対して漢民族は無批判・無関心または冷淡だ。少数民族問題から中国の現体制が揺らぐ可能性はない。 習近平時代が終われば代わりの独裁者が登場するか、あるいは政治的混乱により経済が停滞する可能性もある。ましてや共産党一党独裁体制が崩れれば長期間政治経済は混乱する。 いずれの政治的シナリオにおいても中国を生涯の生活拠点とすることは避けるべきだとL氏は判断。『稼ぐだけ稼いで先進国に生活拠点を確保すること』が自分の家族を守るために自分がやるべきことだとL氏は断言。L氏のビジネス展開や将来設計は伝統的華僑精神である“落地生根”そのものだと感服した。 以上 次回に続く
高野凌