滋賀の古豪公立校を支える元日本ハム選手「フィットネスやヨガを取り入れた異例の練習」を行う理由
フィットネストレーニングで「ケガがなくなった」!
選手たちの中には最初こそ、「こういう練習って意味あるのかな」という気持ちもあったそうだが、今では意図を理解しながら取り組んでいる。昨秋にエースナンバーを背負った藤本 瑛慈(2年)は「野球では怪我なくすることができています。ピッチャーでは下半身の柔軟性を使うので、その辺に活きていると思います」と効果を実感しているようだ。 こうした方針のもと、下田さんが選手たちに目を配っているのが、練習前の体操、練習後の体操の姿勢だ。下田さん自身も怪我が多く、周囲の方に迷惑をかけた苦い記憶がある。 「始まりの体操、ストレッチが少ないのと。終わった後の体操の姿勢もしっかりと見ていかないと思っています」 現在の選手数は2学年で19人。決して人数は多くないが、「戦力は整っていると思います」と田中監督は自信を見せる。 昨夏の滋賀大会は3回戦で敗退。4強まで勝ち進んだ八幡商相手に延長戦までもつれる接戦を演じたが、10回表に取った3点を守り切れずに逆転サヨナラ負けを喫した。この時にレギュラーとして出場した選手も多く残っている。 しかし、昨秋は1回戦で草津東に5対6で惜敗。今年の春と夏で巻き返しを図っており、「今年の夏はこのメンバーと新1年生で絶対にベスト8に行きます」と丸尾 悠斗主将は意気込んでいる。だが、下田さんはさらに上を狙えると思っているようだ。 「優勝を狙えると思いますよ。高校生はちょっとしたことで変わるので、我々がいかに導くかというところが課題かなと思ってやっています」 近年の滋賀県は今春の甲子園出場を果たした近江を筆頭に滋賀学園や彦根総合など私立が優勢な傾向にある。特に5大会連続で夏の甲子園に出場している近江に対しては他校が名前負けをしていると感じることも少なくない。それでも指導の根本に「野球はやってみないとわからない」という考えを持つ田中監督はチャンスがあると感じている。 「近江高校でも高校生同士ですので、手も足も出ないという感じを私は持っていないです。ただ、子どもたちが近江のブルーのユニフォームを見て萎縮するとか、有名なチームの名前を聞いて萎縮することがないように大会までにはしていきたいと思います」 今年で還暦を迎える田中監督は「背水の陣」と位置付けてこの夏に挑む。1922年創部と長い歴史を持ちながらも元プロの指導者を招き、練習にダンスを取り入れるなど、柔軟な発想で古豪復活を目指している大津商の戦いぶりにぜひ注目してほしい。