選挙で拡散する偽・誤情報、AIの影響は? 標的は候補者だけでなく民主主義【解説】
JFCではすでに石破氏の発言を改変した情報に関して検証した。 石破首相「中国の領空侵犯は即射撃を検討」などと発言? 表現を改変【ファクトチェック】(関連記事を参照してください) この他にも「内閣発足の写真撮影時にシャツの隙間から腹が出ていた」というような、石破氏を貶める言説も拡散している。 石破氏に関するネガティブな偽・誤情報の拡散で特徴的なのは、自民党を支持しているように見えるアカウントでも、批判的な投稿があることだ。総裁選で最後まで争った高市早苗氏を支持するアカウントを中心にその傾向が見られる。
民主主義そのものの信頼を揺るがす
もう一つの主要な標的が、選挙制度そのものだ。「不正選挙だ」などという批判や、投票のルールに関する間違った情報が拡散することで、選挙への信頼や関心を貶める。 JFCがこれまでに他の選挙で検証してきた事例では「沖縄県知事選3ヶ月前から那覇市だけで100人増?」「1分間で6000票も増える不正?」などがある。いずれも誤り・不正確と判定した。(関連記事を参照してください) これ以外にも定番なのが「開票計算機が不正に操作されている」という偽情報だ。筆者(古田)がBuzzFeed Japanの編集長時代に検証記事を出し、NHKも2024年4月に報じた。槍玉に上げられた機械に不正ができるような機能はついていない。 冒頭の表で示したように、投開票日までは「投票に行くことは無意味だ」と思わせるような情報が拡散し、投開票直後からは選挙の正当性を疑わせるような情報が投稿される。いずれも民主主義を支えるシステムそのものへの攻撃と言える。 2020年のアメリカ大統領選では敗北したトランプ候補自身とその支持者が「不正選挙だ」と主張し、翌年1月6日の連邦議事堂襲撃事件で死者が出る惨事に繋がった。
メディアの信頼性を落とす偽・誤情報
選挙や民主主義システムの信頼性を落とす偽・誤情報としてもう一つ注目されるのが、選挙について報じるメディアを標的としたものだ。 選挙報道のあり方について、政策についての掘り下げ方が不十分だという批判や、一部の著名な候補者の報道が優先されているというような批判は、事実に基づいていると言える。 ただし、それらの正当な批判とともに、事実とは異なる指摘や根拠のない批判も多い。JFCがこれまでに検証してきたものには「東京都知事選でNHKの候補者の紹介の順番に不正?」「「開票率0%で当選確実が決まる不正選挙?」などがある。いずれも誤りだ。 誤った情報に基づく批判でメディアの信頼性を損ねることは、選挙に関する情報の多くがメディアを通じて報じられる以上、結局のところ、選挙や民主主義システムの信頼性の毀損につながる。