A2ミルク、独自の認証基準で需要拡大狙う 北海道・富良野、120年続く酪農家5代目
北海道富良野市の牧場が消化不良が起きにくく、おなかに優しいとされる「A2ミルク」の普及に取り組んでいる。A2型の遺伝子のみを持つ乳牛から生産された牛乳で、独自の認証基準を設け3月に運用を始めた。飼料高騰などで酪農家の廃業が増える中、牧場を経営する藤井雄一郎さん(46)は「牛乳の付加価値を高め、需要拡大につなげたい」と意気込む。(共同通信=小川悠介) 藤井さんは1904年創業の「藤井牧場」の5代目。2009年に代表に就任し、牛の頭数を増やしたり、飼育環境を改善したりして生乳の出荷量を拡大させた。品質向上にも努めてきたが、他との違いを出すのが難しく課題となっていた。 そこで、ニュージーランドやオーストラリアで知名度が高いA2ミルクに着目。牛乳にはタンパク質のベータカゼインが含まれ、A1型・A2型に分類される。A2型は下痢などの乳糖不耐症が起きにくいといわれ「体質的に牛乳を消化する能力が低い日本人にはA2ミルクが向いている」と考えた。
ただ、国内で飼育される乳牛の大半はA1型か、2種の混合型。さらに、牛乳の製造過程でさまざまな生乳が混ぜられるため、これまでA2型のみを製品化するのは難しかった。 藤井さんは2020年に「日本A2ミルク協会」を設立。大学の研究者らと連携し、乳牛や牛乳を検査する際の仕組みを整備した。 協会が定期的に牛の遺伝子や牛乳のタンパク質を検査するほか、牧場や配送車、加工工場などでA2型以外が混入する恐れがないことを確認する。認証第1号の商品も3月に発売された。 牛を全頭検査し、A2型の群れを隔離して飼育するのは手間やコストがかかるが、これまで体質的に牛乳が飲めなかった人のニーズを開拓できる。藤井さんは「酪農家の利益につながり、業界の救世主になるはずだ」と期待する。