フランス老舗メーカーMicroidsの戦略をCEOに直撃。『コブラ』『グレンダイザー』のゲーム化で注目度急上昇中。「日本市場で大きな存在になりたい。日本IPのタイトルを3本用意している」
『UFO ロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』や『Space Adventure Cobra – The Awakening』(スペースアドベンチャーコブラ- ザ・アウェイクニング)など、日本発IPのゲーム化に積極的に取り組んでいるフランスの老舗パブリッシャーMicroids(ミクロイド)。 【記事の画像(8枚)を見る】 同社は、来年2025年に創業40周年を迎えるフランスの老舗ゲームメーカー。アニメのIPからインディーゲームまで、幅広いタイトルをリリースしている。ゲームのほかに、フィギュアやグッズなども手掛ける。おもなタイトルに『Syberia』シリーズや『スマーフ』シリーズ、『Post Mortem』などがある。2019年には日本法人を設立し、日本IPのライセンス獲得にも積極的に取り組んでいる。 ファミ通では、東京ゲームショウ(TGS)に合わせて来日したMicroidsのCEO、ステファン・ロンジアード氏にインタビューする機会を得た。「日本市場に積極的に取り組んでいきたい」との意欲を見せるロンジアード氏だが、はたしてその戦略は? Stéphane Longeard(ステファン・ロンジアード): Microids CEO 日本のIPは魅力的。日本市場でさらなる存在感を持ちたい ―― 今回TGSに合わせての来日とのことですが、TGSはいかがでしたか?: ステファン: TGSに参加するのはこれで6回目になるのですが、毎年びっくりすることが多くて。とにかく活気があっていいですね。今回TGSに参加したのはビジネスミーティングのためで、スタッフ5人で来日して、ビジネスデイの2日間をフルに打ち合わせにあてたのですが、ぜんぜん時間が足りませんでした。 ――そんなに。知らない方のために、Microidsという会社のことを教えてください。 ステファン: Microidsの創業は1985年で、来年4月に40周年を迎えます。ヨーロッパで最初のゲームメーカーがインフォグラム(当時)ですが、そのつぎがMicroidsになります。私自身は最初からMicroidsに所属していたわけではなくて、2000年にAnuman Interactiveを創業して、2009年にマンガやアニメなどの事業に取り組むMEDIA PARTICIPATIONS GROUPに参入して……という流れになります。同タイミングでMicroidsを買収しました。 Anuman Interactiveはもともとシステムアプリケーション系の会社だったのですが、「ゲームを作りたい」との思いから、Microidsとごいっしょすることにしました。そして、フランスではMicroidsというブランドのほうが圧倒的に知名度が高かったので、2019年に社名をAnuman InteractiveからMicroidsに変更しました。 社名の変更に合わせて、日本法人も設立しています。8年くらい前から日本のIPのライセンスビジネスにも取り組んでいまして、データイーストの『JOE&MAC 戦え原始人』のリメイク作『New Joe & Mac -Caveman Ninja』(日本未発売)やタイトーの『アルカノイド』のリメイク作である『アルカノイド エターナルバトル』などをリリースしています。 『アルカノイド エターナルバトル』。タイトーから1986年にアーケード向けにリリースされたブロックくずしゲームが現在に蘇る。“バトルロワイヤルモード”なども体験できる。3月7日に発売された。 ―― 日本IPの展開に積極的に取り組む理由を教えてください。: ステファン: それだけ日本のIPが魅力的だからでしょうか。ちなみに、世界で見てもマンガ市場は日本のつぎにフランスが大きくて、親和性が高いということは言えると思います。日本IPのタイトルは、着実にステップを刻んできておりまして、これまでに7本リリースしています。着々と展開しているところです。 ――4月にプレイステーション5版が発売された『UFO ロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』は、日本IP展開の最新の成果ということですね。 ステファン: はい。とくにヨーロッパ永井豪さん原作のアニメ 『UFOロボ グレンダイザー』は絶大な人気を誇ります。40~50代なら誰でも知っています。それで、ゲーム化を……ということで決意しました。 『UFO ロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』に関しては、権利元であるダイナミック企画さんと話し合いを重ねて、6年かけてゲーム化を実現しています。開発元であるEndroadが原作愛を込めて作り上げました。同作はフランスやイタリアではスマッシュヒットを記録しておりまして、その結果には大いに手応えを感じています。11月14日にはNintendoSwitch版とXbox版がリリースされるのですが、こちらにも大いに期待しています。 『UFO ロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』。アニメ『UFOロボ グレンダイザー』を題材にしたアクションアドベンチャー。Nintendo Switch版とXbox Series X|S版、Xbox One版が11月14日に3gooより発売予定。 ――先日、寺沢武一氏原作の『スペースコブラ』のゲーム化も発表しましたね。: ステファン: 『UFOロボ グレンダイザー』に次ぐ、日本のクラッシックIPのゲーム化を……ということで考えたときに候補に挙がったのが、こちらもヨーロッパで高い人気を誇る『スペースコブラ』でした。『Space Adventure Cobra – The Awakening』にも大いに期待しています。同作もゲーム化の権利獲得にあたっては3年かけています。アニメ作品のゲーム化にあたっては、地道な取り組みが欠かせません。 『Space Adventure Cobra ‒The Awakening』。コブラがサイコガンなどを駆使して戦う横スクロールアクションゲーム。テレビアニメの12話までを描く。マルチプラットフォームで2025年発売予定。 ―― 今後も日本IPに対して積極的に取り組んでいく予定ですか?: ステファン: はい! 日本のIPはとても人気が高く、競合も強力なライバルが多いですが、着実に存在感を上げていきたいと思っています。ちなみにですが、Microidsではいま日本IPのタイトルを7作リリースしているのですが、現状あと3本動いているんですよ。 ―― おお! それは『マジンガーZ』や『グレートマジンガー』も含みつつですか? ステファン: まだ、具体的なお話はできません(笑)。ヨーロッパで人気の高い日本のアニメIPはたくさんあります。 ――どの日本IPを選ぶか……という選択も難しそうですね。 ステファン: そうですね。国によって有名なIPは違いますからね。たとえば、ヨーロッパではかわいい妖精が活躍する 『スマーフ』が大人気で、ゲームもコンスタントにリリースされていますし、アミューズメントパークまであったりするのですが、日本ではそこまでではなかったりします。ただ、フランスはアニメやマンガがポピュラーなので、日本で有名なIPは、総じてフランスでも人気が高いということは言えるかもしれません。 『The Smurfs - Dreams』。アニメ『スマーフ』をモチーフにしたシリーズ最新作。村を救うために冒険するアクションゲームだ。Steam版が10月24日に発売された。家庭用ゲーム機向けにも発売予定。 ――ヨーロッパで人気のIPを日本に持ってくるのは難しいということですね。両市場の相違点は何でしょうか?: ステファン: 日本とヨーロッパ市場の違いということで言うと、日本ではまだまだ販売店でのパッケージ版の比率が高いことです。ヨーロッパでは80%がデジタル版の販売になっています。ただ、その点Microidsは少し特殊でして、ファミリー向けやコレクターズエディションが多いので、そのぶんパッケージ版の販売が多くなっており、売上の70%がパッケージ版なんです。 ――そういった相性のよさも、日本のIPに積極的な理由のひとつと言えそうですね。一方で、Microidsはオリジナルタイトルにも注力していて、12月12日には日本でも『蟻の帝国‒Empire of the Ants』がリリースされますね。 ステファン: そうですね。1991年から刊行されて、世界中で3000万部販売されているベストセラー小説であるベルナール・ウェルベルさん原作の 『蟻』シリーズ三部作のゲーム化タイトルとなります。じつはMicroidsでは20年前にも『蟻』三部作をPC向けにゲーム化しておりまして、大ヒットを記録しているのですが、今回再ゲーム化ということになります。 ――そうなのですね。なぜ20年ぶりにゲーム化を? ステファン: もともと作りたいという話はあったのですが、なかなかタイミングが合わなかったんですね。それが、「いまの技術で蘇らせたい」とのことで、実現の運びとなりました。ゲーム自体はまったく新しく生まれ変わっていて、蟻の世界をリアルに描いたストラテジーとなっています。 ――蟻のグラフィックがとてもリアルですね。 ステファン: 原作者であるベルナールさんがとにかくゲームが大好きで、本作には彼の思いも強く反映されています。10000匹単位の蟻がひとつの画面で動くというのも、ベルナールさんのビジョンを反映してのものです。 本作の開発を担当するのは、『トータルウォー』シリーズなどを手掛けたこともあるベテランクリエイターが多数在籍するTower Fiveというスタジオなのですが、高い技術力を持ってベルナールさんの要望に応えてくれました。ベルナールさんとTower Fiveは頻繁に打ち合わせを重ねていて、上がってきたクリエイティブは全部ベルナールさんがチェックしています。企画が動き出したのは7年前で、開発には3年かかっています。 『蟻の帝国-Empire of the Ants』。ベストセラー小説をゲーム化したストラテジーゲーム。Steam版は11月7日に、プレイステーション5版はレイニーフロッグから12月12日に発売される予定だ。 ――こだわりの詰まった一作と言えそうですね。せっかくなので、今後の話も聞かせてください。これからMicroidsはどのようなことを考えているのですか?: ステファン: まずは、日本市場で大きな存在になりたいです。そのためには、日本の市場をもっと理解したいですし、日本のIPをさらに獲得したいです。 先ほどお話しした通り、ここ数年Microidsでは日本IPの獲得に積極的に取り組んでいますが、今後はさらなる施策として、日本タイトルのヨーロッパ進出の手助けもしたいと考えています。ヨーロッパに販路を持たない日本のスタジオやクリエイターと契約して、ヨーロッパでの代理店としての仕事をしたいと思っているのです。いままさに日本のゲームスタジオやクリエイターさんと交渉中です。現時点で具体的なお話はできませんが、もうすぐ日本の大手メーカーとのコラボレーションが発表できるかと思います。 ―― TGSのミーティングで時間が足りなかったのは、その打ち合わせのためだったからなのですね。 ステファン: TGSでの目的はふたつありました。ひとつが新しいIPの発掘です。そしてもうひとつが日本の会社に、ヨーロッパ市場でMicroidsといっしょに存在感を放ちましょう、ということです。両方とも大きな成果を上げられたのではないかと思っています。 ―― 最後に今後の抱負をお願いします。 ステファン: くり返しになりますが、Microidsは日本市場で大きな存在感を持ちたいと思っています。2024年内にも、日本IPのゲーム化作 『UFO ロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』のNintendo Switch版や、オリジナルタイトル『蟻の帝国‒ Empire of the Ants』をリリース予定です。今後も続々とタイトルを準備しています。今後のMicroidsのさらなる展開にご期待ください。 【TOPIC】Microidsがアークシステムワークス『ダブルドラゴン リヴァイヴ』とヨーロッパやオーストラリアにおける販売契約を締結 インタビュー後の10月18日、Microidsがアークシステムワークスと『ダブルドラゴン リヴァイヴ』(Double Dragon Revive)の販売契約を締結したことを発表した。ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、中東、アフリカでの『ダブルドラゴン リヴァイヴ』のパッケージ版は、Microidsから発売されることになる。 この件に関して、Microidsのビジネス開発・販売担当副社長・ジュリアン・レンザホ氏(Julien Renzaho)は以下の通りコメントしている。 「この戦略的パートナーシップにより、Microidsはアークシステムワークスのような有名パートナーと提携することで、ヨーロッパにおける小売ゲームの流通における専門知識を強化することができます。この提携を通じ、『ダブルドラゴン リヴァイブ』を物理的な形でヨーロッパのゲーマーにお届けできることを嬉しく思います。この契約はMicroidsにとって大きな一歩であり、国際的な企業、特に日本業界の大手企業とパートナーシップを結び、世界的な規模でのリーチを広げたいという我々の野心を示しています。」