トランプ再選、関税引き上げで国内自動車産業に大打撃 エネルギー業界には歓迎の声も
米大統領選でトランプ前大統領が当選確実になったことで、日本の産業界に大きな影響を及ぼすことは避けられない情勢となった。前回政権を担っていた当時から続く「米国第一主義」を鮮明にした姿勢がトランプ氏の経済政策の土台となる。海外からの輸入品に高関税を課すことで、日本でも自動車産業を中心に企業が打撃を受け、経済に混乱が生じる懸念がある。 【グラフィックでみる】トランプ氏が当選した場合に懸念される、日本の企業活動への影響 「トランプになって、自動車がきつくなる」。幅広い産業を所管する経済産業省幹部はこう断言する。 ■同盟国にも高関税 トランプ氏は自国の製造業を保護するため、同盟国の日欧を含めたすべての国からの輸入品に対して10~20%の関税を課す方針を示す。自動車は2023年に日本から米国に年間約150万台輸出され、輸出額は約5兆8千億円と、対米輸出全体の3割程度を占める最大の品目だ。 課された関税を販売価格に転嫁すれば、日本車が割高になって米国で競争力を失い、価格に転嫁しなければ、企業の収益力が下がってしまう。この両方を避けるために現地生産にシフトすれば、今度は国内工場での生産が減って、国内の雇用が失われることになる。 「ここ2~3年は国内投資にベクトル(方向性)を明確化して産業政策を進めてきただけに、これから難しい対応を迫られる」と経産省幹部は気を揉む。 日本車への影響は直接輸出だけではない。トランプ氏はメキシコから輸入する自動車に100%の関税を課す考えを示す。日系自動車メーカーはメキシコの車両工場を米国への輸出基地として整備してきた。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、マツダなどは生産する車両の7~9割を米国に輸出しており、関税引き上げが各社に及ぼす影響は甚大になる。 ■半導体の対中規制がリスク要因に 自動車以外では、半導体の対中規制の行方が注目される。米国は、中国への先端半導体製造装置の輸出を規制し、日本も米国に追随している。一方で汎用半導体の製造装置は規制の対象外となっている。その隙間に中国からの注文が集中し、日本の大手装置メーカーには売上高の半分近くを中国向けが占める企業もある。そうした中で、トランプ氏が対中規制を強化すれば、日本メーカーの業績が低迷するリスクもある。 「エネルギー業界ではトランプは歓迎だ」。自動車や半導体産業の懸念とは裏腹に、電力大手関係者からはこんな声も聞かれる。