ブラックバスの本当の生態がわかってきた/道具の有無もあるが結局は練習量がものを言う
ライブ系ソナー(Forward Facing Sonar)がバスフィッシングに与えた影響はあまりにも大きい。では実際、プロアングラーにはどんな変化があったのか?ライブスコープの導入とともにそのテクニックを包み隠さず公開してきた大津清彰さんが語ってくれた。 [写真]この記事の写真ギャラリー
大津清彰(おおつ・きよあき)
ティムコの製品開発などを担当、野良ネズミやトラファルガーなど多くのヒット作を手掛ける。昨年は第10代目艇王の称号を獲得し、今年度も青木大介を倒して決勝進出。ルアマガprimeで『バス釣り真相解明』を連載している。
バスフィッシングの一大変革期に立ち会えたことが嬉しい。
◆生態があらわになる夢のツール。 2017年の秋、初めて利根川を訪れた佐々一真を案内したことが、大津のバス釣り人生を変えた。ライブスコープの前進モデルであるガーミンの『パノプティクス』との出会いだ。 大津「そのころはまだ、魚探で前方が見えることの革新性に気づいている人が少なかったんです。すぐに導入して、利根川のTBCトーナメントでこっそり使いはじめました。ほかには誰も使っていなかったはずです」 沖の沈みものなどを撃つ場合、従来は魚探のGPSの精度だけが頼りだった。しかしガーミンがあれば「このへんに沈みものがあったな」程度の記憶でボートを止め、あとは振動子を振って正確な位置を捕捉、ピンスポットにキャストを決めて一投で移動するなど、圧倒的に効率よく動けるわけだ。 大津「その後に発売されたライブスコープもいちはやく入手して、相模湖や津久井湖、房総などのレンタルボートで練習するようになりました。試合どうこうじゃなくて、魚の本当の生態が知りたい、という思いも強くなっていましたね」 東京水産大(現海洋大)出身の大津は、胃の内容物を調べるストマック調査などバスアングラーには珍しい手法でバスの生態にアプローチしてきた。実は大学などの研究機関レベルでも、魚類に関しては未知の部分が多いのだという。その点、これまでわからなかった水中のようすが把握できるライブソナーは夢のツールだった。 大津「“バスはストラクチャーを好む魚”といった定説は、ライブソナーの登場で完全に否定されました。秋なんて青物のようなスピードで大回遊してますからね。ただしボトムや障害物を使ったほうがルアーに反応させやすいのは確かで、それが過去のセオリーになっていたんでしょう」 ◆練習はウソをつかない。 ライブソナーがかなり普及した現在でも、突出した成績を残しているのは一部のアングラーに限られている印象がある。それはなぜか。 大津「極論すると、やっぱり『練習量』じゃないでしょうか。毎日のように湖に浮いている青木唯さんみたいな人は別格として、プロでも意外に練習が不足している人はいます。むしろアマチュアでも、毎週土日に釣りができる環境にあるアングラーのほうが、どんどん上達する傾向があると感じます」 画面を見ながら、適切な位置にキャストを決め、バスとの位置関係のどこでルアーを逃がすか、あるいは戻すのか―。ひとつひとつの感覚を身体に叩き込むための「練習」が欠かせないという。釣果の差はデジタル機器の有無ではなく、フィジカルによって左右されるというのが興味深い。 大津「僕がライブシューティングをやりはじめたころは、『サイトフィッシングを身に着けないとダメだ』と感じて、そっちも同時並行で修行しました。あと、ライブソナーを使っている一般アングラーのなかには、そもそもバスやルアーを映すためのセッティングができていない方がいます。僕はすべてオープンにしているので、フィールドで出会ったときなどにぜひ質問してください」 大津「これまで僕が開発したルアーは表層系がほとんどでした。水中で使うアイテムは、経験則で釣れると感じても『それが本当に効いているのか』という裏付けが取れなかった」 それを変えてくれたのもライブソナーだった。開発スピードも著しく向上。 大津「余談ですが、ルアーを『お尻から』見るようになりました。クランクベイトでもなんでも、バスはかなりの距離を追尾して食うことが多いんです」 「利根川でライブソナーを導入していたころ、優勝はできなかった。暖かい時期にしか試合がなかったからです。この釣りがいちばん効くのは11月から翌年2月まで。相模湖なんかだと、ハイシーズンよりも冬のほうが狙って2桁釣果が出せます」 関東のフィールドでライブソナーを練習するなら房総リザーバーがおすすめ、と大津。バスの個体数だけを考えれば相模湖もハンパないが、すでに猛者たちのライブシューティングでかなりのプレッシャーが掛かっているという。