“発がん性物質”PFASが「全国209カ所」で発覚 それでも「調査は後手後手」「血液検査には“及び腰”」の日本の実態
遅れる実態調査
「日本の水が危ない!」と題した特集を週刊新潮が開始して1カ月ほどたった。その間にも、全国の河川や地下水などの水源地では、続々と発がん性物質PFASが検出されている。 これまで検出されなかった北海道や四国でも、国の暫定目標値よりはるかに高濃度のPFASが見つかっているのだ。世界でもトップレベルの安全性を誇る日本の水が、実は危機に瀕している。そのことが次々と明らかになったというのに、われらが政府の腰は重い。 今年6月、ようやく内閣府食品安全委員会の作業部会が、PFASの危険性について初めて言及したばかり。どれほど水道水が汚染されているかについては、環境省が9月末までに全国の自治体や水道事業者に報告を求めているが、いつどのような形で公表するのか明言していない。 「日本ではPFAS調査が法的に義務付けられていません。するかしないかを含めて、各都道府県や自治体に対応が任せられているので、どこがPFASで汚染されているか詳しくは分かっていないのです」 と嘆くのは、PFAS研究の第一人者で京都大学大学院医学研究科(環境衛生学)の原田浩二准教授だ。 「各都道府県の大きな河川では、年1回など定期的に調査はされていますが、そこから汚染源を特定する追跡調査はほとんどされていません。仮に汚染源が特定できても、汚染を食い止め、拡大を防いだりするための改善命令や指導を行政ができる法制度が整っていない。そのため各自治体は調査に消極的になっている側面があります。PFASは自然界に存在しない物質ですから、検出されたら汚染源を突き止め対策に乗り出すシステムを、国は早急に構築すべきです」
“かえって不安が増す”
むろん、前述の多摩地区などでは、自治体が水道水の水源地を変更したり、浄水場にPFASを除去できる活性炭フィルターを導入したりして、一定の安全性確保に取り組んではいる。 だが、各自治体は“対症療法”をすることはできても汚染源を特定して封じ込める強制力は持っていない。そもそも大半の自治体では、いまだ汚染の実態さえつかめていない有様なのである。 果たしてそんな水を飲み続けて大丈夫か。不安に思う人は多いだろう。 これまで週刊新潮が報じてきたように、PFASは水道水以外にもミネラルウォーター、ファストフードの包装紙や化粧品、日焼け止め、レインコートなどにも含まれている。これだけPFASに取り囲まれていれば、知らないうちに体内へと取り込んでしまっている可能性は否めない。 そこで、自分の体内にどれだけPFASが蓄積しているのか、どれだけ健康リスクを抱えているのかを知る手助けとなるのが「血液検査」であるが、8月2日付の東京新聞が報じたように、環境省は現時点で十分な知見が得られていないことを理由に、住民へ血液検査を行えば“かえって不安が増す”と及び腰なのである――。 有料版の記事では、大きな反響を呼んだ「全国141カ所PFAS『汚染ハザード』一覧マップ」の改訂版である「209カ所ハザードマップ」と、わが国で進まない血液検査の実態と必要性、そして国内で初めて通常診療の一環として血液検査を開始したという東京都内の医療法人について詳報している。 デイリー新潮編集部
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