異形、微小…ほんとうにマニアックな甲虫の世界(野村周平/甲虫研究者)
肉眼でどこまで見える? 難しい微小すぎる甲虫の世界
カブトムシやクワガタムシの巨大な種は、古くからよく研究されていて、新種が見つかることはめったにないが、逆に微小な甲虫は研究が十分になされておらず、たくさんの種が学名が付けられないままに残されている(このような種を「未記載種」という)。微小な甲虫などたくさんいそうに思えるが実は、体長が1ミリを下回るような極端に微小な甲虫は非常に数が少ない。今回の「昆虫 MANIAC」展では、このような種にもスポットを当ててみた。
まずは、甲虫の中では圧倒的な少数派であるナガヒラタムシ亜目に含まれるチビナガヒラタムシ(図2①)は、体長やっと1ミリを超える程度で細長く、存在感の薄いふにゃふにゃした体を持っている。同じく少数派のツブミズムシ亜目に含まれるクロサワツブミズムシ(図2②)やケシマルムシ(図2③)も微小だ。ハネカクシ科アリヅカムシ亜科にもホソヒメアリヅカムシ(図2④)やチビマルアリヅカムシ(図2⑤)などの微小種がある。近似のコケムシ亜科では最近佐賀県から新種記載されたNogunius sagaensis(和名なし)(図2⑥)という種が体長0.8ミリと格段に小さい。同じハネカクシ上科のムクゲキノコムシ科には微小種が多く含まれ、日本産の最小種としてよく知られているのはヒジリムクゲキノコムシ(図2⑨)で体長わずか0.5ミリである。 現段階で世界最小の甲虫は、同じ科のNanosellini族のScydsella musawasensisで、体長0.325ミリとされている。本種は南米ニカラグアおよびコロンビアから知られ、国立科学博物館には標本が所蔵されていない。しかし同じ族の種は日本や東南アジアから見つかる(図2⑦、⑧)。 ヤコブソンムシ科のDerolathrus属はやはり0.7ミリ前後と小さい(図2⑩)。ハムシ、ゾウムシには意外と1ミリを下回る微小種は少なく、ベトナムで発見したClavicornaltica属のハムシ(図2⑪)がやっと体長1ミリほどだった。 体長1ミリを下回るような甲虫は野外で見つけることが大変難しい。多くは衝突板トラップやライトトラップで採集され、食性などの生態が不明なものも多い。私たちの身近なところにもまだ未発見の虫がいっぱいいるのではないかと思われる。