福島復興サイクルロードレースシリーズ 被災地の“息吹”全身に 大雨で昨年中止 待ちわびた景色満喫
「復興の歩みを感じられた」「にぎわいが戻ってほしい」。14日に開幕した福島復興サイクルロードレースシリーズ「ツール・ド・ふくしま2024」の参加者には、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から立ち上がろうとする地域の姿や、美しい景観への理解と共感が広がった。昨年は大雨で中止となっただけに2年分の思いを胸にペダルをこぐ人の姿も。沿道で声援を送った住民らは「地域が活気づく」と全国から集ったレーサーを歓迎した。 2日間で245キロを走る最長部門の「ふくしま240」はJヴィレッジ(福島県楢葉町・福島県広野町)を午後2時30分に出発。東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)などを通り、相双地方の85キロを走り抜いて釣師防災緑地公園(福島県新地町)に着いた。 千葉県市川市の市村愛さん(44)は「気持ちよく走れた」と汗を拭った。整備の行き届いた道路や新しい施設から復興の進展を感じる一方、飲食店やスーパーの少ない地域を目にして「完全に元通りにはなっていないんだ」と思った。
関東地方で暮らす普段は震災や原発事故について考える機会は少ないが、住民の声援を背に被災地を駆ける中で福島への思いを深めた。「大会を通して福島の今を知ることができた。自分たちが参加することで少しでも復興につながれば」と願った。 東京都の関口篤史さん(50)は県内や岩手県で復興支援のボランティアに携わり、被災者の苦労に触れた経験がある。当時に比べて道幅が広がり、走りやすくなっていたが、沿道の建物の少なさが気になった。「いまだに復興途上だと実感した。にぎわいが戻ってほしい」。穏やかな海岸線を眺め、心を寄せた。 2年連続でエントリーした宮城県亘理町の伊藤洋平さん(34)は「東北地方で全国規模のレースに挑戦できるのはうれしい」と笑みを浮かべた。 コース上の大洲松川ライン(相馬市)は普段から練習で走り慣れている。太平洋と松川浦を臨む風光明媚(めいび)な風景、冬場も穏やかな気候がお気に入りだ。昨季はこの大会に照準を合わせていたため、ようやく立てた舞台への思いはひとしおだ。今年は友人も誘って参加した。「来年以降も出続けたい」と大会の定着に期待した。