聖光に「桜」の守備 元代表・宇佐美和彦さん指導で開花 福島県高校ラグビーV
大舞台で選手たちが躍動し、花園の切符という確かな成長の証しを示した。福島県いわき市で2日に行われた全国高校ラグビー県大会決勝で聖光学院優勝の大きな力となったのが、元日本代表のコーチの存在だ。チームが積み上げてきた土台に技術面の武器が加わり、6年ぶりの栄光をつかんだ。 「よく我慢して戦ってくれた」。佐藤忠洋監督は試合後、選手をねぎらった。2018年に県大会初制覇を果たしたが、以降は優勝から遠ざかっていた。苦しむチームに心強い味方が加わったのは昨年4月。「桜の戦士」と呼ばれるラグビー日本代表経験を持つ宇佐美和彦さん(32)が本県に移住して聖光学院の教員となり、ラグビー部のコーチに就任した。 就任当時のチームを「自分を表現できない控えめな子が多かった」と振り返る宇佐美さん。練習では一方的な指導ではなく、選手に考えさせる環境をつくることを意識した。「なんでも聞いて」と歩み寄り、選手との距離を縮めながら守備を中心に指導を重ねてきた。
県外から経験者入学
さらに追い風となったのは、宇佐美さんを慕って県外からラグビー経験者が入学したことだ。その一人がFWのアニセ・マウシオ(1年)。元日本代表でフィジー出身の父アニセ・サムエラさんが宇佐美さんと同じチームでプレーしていた縁もあり、「宇佐美さんの指導を受けて花園に行きたい」と東京都から聖光学院の門をたたいた。 決勝では、昨年王者の学法福島の最大の武器「ドライビングモール」にいかに対応できるかが鍵となった。「今日は地面とにらめっこだぞ」。宇佐美さんはFW陣に低い姿勢を崩さず、立ち向かうよう指示を飛ばした。この言葉に選手たちが応えた。モールで密集しながら押し込んでくる相手のプレーを見事に封じ、得点を与えなかった。主将の木村倭(やまと)(3年)は「練習してきたことを発揮できた」と充実した表情を見せる。 20年以上指揮を執る佐藤監督がつくり上げてきた土台に宇佐美さんらコーチ陣の技術的な指導が加わり、チームは大きな成長を遂げた。佐藤監督は「ラグビー経験がない私の指導の裏付けとなった」と語る。 花園で県勢は6年連続で1回戦敗退している。「まずは1回戦を突破する。支えてくれた人に恩返しがしたい」と木村。聖光学院フィフティーンが確かな自信を胸に聖地での活躍を誓う。(熊田紗妃)
福島民友新聞